日本共産党

2004年1月29日(木)「しんぶん赤旗」

北朝鮮問題

単独経済制裁のための外為法「改正」

6カ国協議の国際合意に反する

衆院財務金融委 日本共産党は反対


 北朝鮮への送金停止を可能にすることなど、日本が他国に対する経済制裁を単独で判断し、実行できるようにする外国為替法・外国貿易法「改正」案が二十八日の衆院財務金融委員会で、自民、民主、公明三党の提案で審議され、賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。

 質疑で日本共産党の佐々木憲昭議員は、昨年八月、北京で日本も参加して開かれた「六カ国協議」での六項目の合意(別項)を外務省に読み上げさせたうえで、「ここで『平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらない』という合意がされている。この国際的約束はたいへん重要であり、その順守は、北朝鮮問題の平和的解決のために日本が果たすべき責任でもある。そういう状況のもとで、現在提案されている日本単独での経済制裁の法案を準備するということは、この六カ国協議で国際的に約束をされた内容に反すると考えるので、私どもはこの改正案に反対であると立場を表明しておきたい」とのべました。

 佐々木氏は「拉致問題は日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として許すことのできないものだ。私たちは真相の全面的解明、拉致の責任者の厳重な処罰、被害者への謝罪と補償を要求し、帰国した五人の家族の帰国についてもその実現のために北朝鮮側が誠意をもって対処することを求めている。その解決は被害者、家族の切実な願いであり、多くの国民が解決を願っているものだ」とのべました。

 さらに「北朝鮮はビルマ・ラングーンでの爆破事件、大韓航空機事件など国際的な無法行為を繰り返してきた。拉致問題もこういった国際的な無法行為の一つだ」として、「解決するためには、北朝鮮の無法行為全体の清算を求めていくという課題の一つとして位置付け、国際社会全体の取り組みにしていくことが必要だ」と強調しました。


外務省が読み上げた
6カ国協議での6項目合意

 昨年八月、北京でおこなわれ、日本、韓国、ロシア、米国、北朝鮮、中国が参加した第一回六カ国協議での六項目合意は次の通りです。

 (1)六者会合の参加者は、対話を通じて核問題を平和的に解決し、朝鮮半島の平和と安定を維持し、恒久的な平和を切り開くことに同意した。

 (2)六者会合の参加者は、朝鮮半島の非核化を目標とし、北朝鮮側の安全に対する合理的な関心を考慮して、問題を解決していく必要があることに同意した。

 (3)六者会合の参加者は、段階を追い、同時的又は並行的に、公正かつ現実的な解決を求めていくことに同意した。

 (4)六者会合の参加者は、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらないことに同意した。

 (5)六者会合の参加者は、ともに対話を通じ相互信頼を確立し、意見の相違を減じ、共通認識を拡大することに同意する。

 (6)六者会合の参加者は、協議のプロセスを継続し、可能な限り早期に外交経路を通じ、次回会合の場所及び日時を決定することに同意した。


国際合意に反し、平和解決の共同の努力に逆行

外為法「改正」案

解説

 二〇〇二年十月に表面化した北朝鮮の核問題を解決するため、中国の仲介で昨年四月に米国、北朝鮮、中国の三カ国協議が北京で開かれました。これは問題解決のための最初の多国間協議の場となりました。その後、中国政府の働きかけと関係各国の努力によって、日本、韓国、ロシアも加えた六カ国で、同年八月末に北京で第一回の六カ国協議が開催されました。

 この協議のまとめとして主催国で議長役を務めた王毅・中国外務次官が六カ国の合意として発表したのが六項目の合意です。佐々木議員の国会質問で外務省が読み上げた六項目合意の第四項目は「状況を悪化させる行動をとらないことに同意した」という内容です。

 現在、その合意をふまえて、第二回協議実現のための関係国の大きな努力が続けられています。中国がこの協議の早期かつ成功裏の開催のため“シャトル外交”を繰り返すなど懸命の努力が続けられています。

 こうした努力のなかで関係国は北朝鮮にたいする見方や評価を超えて米国を含めて「状況を悪化させる措置はとらない」という合意を守り、それを破ったり反する行動をとる国はありませんでした。

 こうした時に、日本が経済制裁の法律を準備することはとりわけ重大であり、現在、懸命の努力を続けている関係国の意思にも反するものです。

 北朝鮮問題解決のための六カ国協議の枠組みは定着しつつあり、北東アジアの平和という新しい多国間協議の枠組みとして重要になっています。 また日朝間にとっても、この枠組みは拉致(らち)問題をはじめとする諸懸案を解決していくうえで、新しい可能性と広がりをつくるもので、きわめて重要です。

 日本共産党は第二十三回大会決議で「北朝鮮問題の解決は、あくまで外交的・平和的手段によるべきであって、戦争につながるあらゆる動きを許さないことが重要である」と強調。六カ国協議について「重要な一歩」であり、「この外交交渉のプロセスが継続・前進し、問題解決に道が開かれることを強く求める」としました。

 日本共産党の不破哲三議長は「六カ国協議を通じて、北朝鮮の核問題が道理ある解決に到達したら、その成果が朝鮮半島問題で画期的な意義を持つことはもちろん、より広く、北東アジアの平和という問題についても重要な足掛かりを残すことは間違いありません」(パンフレット『どう考える北朝鮮問題』)と語っています。 (面川誠記者)


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