2004年1月10日(土)「しんぶん赤旗」
石破茂防衛庁長官は九日夕、イラクへの自衛隊派兵で、陸上自衛隊の先遣隊と、航空自衛隊の本隊に派遣命令を出しました。占領軍への攻撃が相次ぐ“戦地”へ戦後初めて自衛隊を派兵させるものです。
陸自の先遣隊は約三十人。防衛庁で小泉純一郎首相も出席しての部隊編成完結式をおこなった後、十五日前後に民間機で出発。クウェートを経由し、イラク南部のサマワへ向かいます。軽装甲機動車八台と現地で携行する機関銃などの火器は、チャーターしたロシアのアントノフ輸送機で、北海道の新千歳空港からクウェートへ搬送します。
先遣隊は、現地の治安状況などの情報収集と、本隊の受け入れのための準備をおこなうのが任務。一部は一週間程度で一時帰国し、現地の治安状況などを政府に報告。これを踏まえ、小泉首相は、本隊の派兵を最終判断します。
防衛庁は早ければ今月末に、宿営地の設営をおこなう施設部隊約八十人を送り、二月下旬から三月下旬にかけて残る本隊約四百四十人を三次に分けて派兵する方向で調整しています。
空自本隊は約百五十人。二十六日前後に、C130輸送機三機を空自小牧基地(愛知県小牧市)からクウェートに送り込み、訓練を終えた後、クウェートを拠点にイラク国内の空港への米軍物資などの輸送を始めます。本隊の隊員は、政府専用機で運ぶ案も浮上しており、政府部内で調整中です。
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日本共産党の市田忠義書記局長は九日夕、国会内で記者会見し、陸上自衛隊の先遣隊と本隊への派遣命令の決定について、「戦後初めて、現に戦闘が行われている地域に重武装した地上軍を海外に出すことであり、日本がこれまで歩んできた道を根本から覆す大転換への一歩を踏み出すものだ。憲法の根本原則をいちじるしく踏みにじる歴史的暴挙だ」と厳しく批判しました。
市田氏は、先遣隊は本隊の一部であり、宿営地や輸送ルートの確保なども任務にすえられるなど「まぎれもない米英軍への軍事占領支援の具体的な一歩にほかならない」と指摘。いまイラクは「散発的なテロ」などということでは済まされない深刻な戦闘状態になっており、「戦後初めて、自衛隊が他国の国民を殺し、戦死者が生まれかねないとの国民の不安と怒りが、先遣隊派遣の決定でますます高まり、募る事態になっている」とのべ、憲法をじゅうりんしてでもアメリカに付き従うものだと批判しました。
とりわけ重大なこととして、「公明党がイラク派兵の露払いの役割を果たしていることだ」と強調。「自民党単独だったら国民の世論の手前やれなかったことまで、公明党から背中を押されて、いっそうの暴走に拍車をかけている」と告発しました。
市田氏は、国会外でのイラク派兵反対の世論とあわせ、全国で街頭宣伝に立ちあがるとともに、十九日から始まる通常国会で真正面から論戦を挑む決意を表明しました。