2003年12月11日(木)「しんぶん赤旗」
十日、東京・日比谷野外音楽堂でひらかれた「12・10中央集会」で日本共産党の志位和夫委員長があいさつしました。その大要を紹介します。
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みなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。私は、きょうはみなさんと一緒にデモ行進で歩くために参加しました(拍手)。日本共産党を代表して、心からの連帯のあいさつをおくります。(拍手)
小泉内閣は、昨日、イラクに自衛隊を派兵する「基本計画」の閣議決定を強行しました。
そのさい、首相は、記者会見で、「戦争に行くのではない」とくりかえしいいました。しかし、イラクが「全土が戦場」となっていることは、米英占領軍当局も認めていることです。テロの標的とされた国連も、赤十字も、「復興支援の前提が崩れた」として、すでに撤退してしまっています。
イラクは「戦後」ではありません。いまなお戦争が続いている「戦地」なのであります(「そうだ」の声)。その「戦地」に完全武装、重武装した軍隊を派兵しようとしながら、「戦争にいくのではない」――こんな言い分が、とうてい通用しないことは、だれが考えても明らかではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
それではこの派兵計画に、少しでも大義があるでしょうか。(「大義はない」の声)私は、昨日、小泉首相との党首会談の席で、国際社会の道理にてらしても大義がない、日本国憲法にてらしても大義がない、二重に大義がない最悪の選択だと、きびしく批判しました。
第一に、イラクへの自衛隊派兵は、米英軍による無法な侵略戦争と不法な占領支配に、軍事力をもって加担するものであるということです。
小泉首相は、もっぱら「人道復興支援にいく」とくりかえしています。しかし「基本計画」をみれば、それとならんで、自衛隊が「安全確保支援活動」をおこなうと明記してあります。「安全確保支援活動」とは何か。米英軍がおこなっている軍事占領支配を支援する活動のことです。それでは米英軍がおこなっている軍事作戦とはどのようなものでしょうか。
最近、米軍がおこなった軍事作戦に、「鉄のハンマー作戦」というものがあります。「ゲリラ掃討作戦」と称して、激しい空爆をふくむ作戦がおこなわれました。ゲリラ勢力の会合や武器保管につかわれたとされる民家は、女性や子どもをおいだして破壊するという野蛮きわまりないことがやられました。
みなさん、こうした無法・横暴な軍事占領支配こそが、イラク国民の怒りと憎しみをよびおこし、イラクの泥沼化を日に日に深刻にしている元凶ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
その占領支配の支援のために、自衛隊派兵を強行すれば、泥沼化をいよいよ深刻にし、日本も占領国の一員としてイラク国民の怒りと憎しみの対象とされる。とりかえしのつかない結果を招くことは、火を見るよりも明らかであります。(「そうだ」の声)
首相は、「テロにひるんではならない」ということをくりかえしていますが、私は問いたい。イラクをテロと暴力が横行する国にしてしまったのは、いったい誰なのか。自らが支持した無法な侵略戦争と不法な占領支配こそ、いまの荒廃状況をつくった。このことへのきびしい反省こそ、いま強く求められているのではないでしょうか。(拍手)
昨日の日本政府の自衛隊派兵の閣議決定について、イラク統治評議会の報道官は、「これ以上の外国軍はいらない。イラクの問題は、イラク人自身で解決すべきである」と言明しました。イラク問題の解決のために、いまもとめられているのは、軍隊の派兵ではありません。
米英軍主導の占領支配を一刻も早くやめ、国連中心の枠組みによる復興支援にきりかえ、イラク国民にすみやかに主権を返還し、米英占領軍は撤退する――そのための道理にたった外交努力こそ、憲法九条をもつ国の政府としてなすべきことだ。私は、このことを強く訴えたいと思うのであります。(大きな拍手)
第二に、イラクへの自衛隊派兵が、憲法をふみつけにした海外での武力行使に道を開くものであることは、あまりにも明りょうです。
小泉首相は、「戦闘地域には送らない」ということを、呪文(じゅもん)のようにくりかえしています。しかしイラクに「戦闘地域でない」といいきれる場所など、存在しません。(「そうだ」の声)
陸上自衛隊を派兵する予定とされているサマワを中心とするイラク南東部も例外ではありません。つい最近、サマワ近郊で、ハンガリー軍が襲撃される事件がおこりました。昨日は、サマワの米英占領軍当局の事務所に市民のデモがおしよせ、オランダ軍が発砲し、負傷者が出るという事件もおこりました。自衛隊がサマワに展開すればイラク国民に銃口をむけ、「殺し、殺される」という最悪の事態がおこらないという保障はどこにもありません。
みなさん、むしろ真実は、自衛隊が派兵されたその場所が「戦闘地域」になる。ここに真実があるのではないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。「自衛隊をイラクに出せば、占領軍の一部とみなされ、確実に攻撃対象になる」――このことは関係者が共通して指摘していることであります。現に、米英軍支援のために派兵した、イタリア、スペイン、ハンガリーなどの軍隊が、つぎつぎに襲撃されています。「戦闘地域には送らない」という虚構にしがみついて、憲法を蹂躙(じゅうりん)する海外での武力行使への道をひらく、この暴挙は、なんとしても食い止めなければならないのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
昨日の小泉首相の記者会見を聞いて、私は、大きないきどおりに包まれました。小泉首相は、こともあろうに憲法の前文の一部を引用し、派兵の正当化をはかろうとしました。小泉首相は、「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」などの憲法前文の一節を引きましたが、みなさん、いまの世界で、「自国のことのみに専念して他国を無視」してはばからない国といえば、いったいどこでしょうか。(「アメリカだ」の声)
国連を無視してあの無法な戦争にのりだしたアメリカこそ、ぴったりあてはまるじゃありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
そのアメリカに無条件に追随して、無法な戦争を支持してきた日本政府にも、ぴったりあてはまるではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
この憲法前文の一節は、過去の侵略戦争の痛苦の反省から、国際ルールを無視した勝手な行動を強く戒め、恒久平和を誓ったものです。そして、何よりも、憲法の前文というのは、憲法九条――「戦争をしない、軍隊をもたない」と明記したこの世界に誇る宝と一体に結びついたものであります(拍手)。それをふみつけにする暴挙への道をふみだしながら、その正当化の理由に憲法をもちだす――これほど恥ずかしいことはない、これほど無知なこともない、これほどの厚顔無恥もありません。このことを私ははっきりと言いたいと思います。(拍手、「そうだ」の声)
小泉首相は、昨日の会見で、二人の日本人外交官の犠牲に触れ、「この悲しみをのりこえて」と、派兵の方針をのべました。この論理は、恐ろしいものであります。外交官の犠牲が痛ましいものだったからこそ、こうした犠牲をくりかえさないために、いまたちどまって自らの方針を再検討することこそが、政治にたずさわる者に求められている責務ではないでしょうか。(拍手)
かつて侵略戦争で犠牲となった若者を「英霊」とし、その「御霊(みたま)」をしずめるためだといって、戦争をとめどもなく拡大していった、歴史のあやまちを決してくりかえしてはなりません。(拍手)
「基本計画」を決めたものの、派兵の具体化と実施はこれからです。私たちのたたかいもこれからです。(「そうだ」の声、拍手)
この歴史的暴挙をくいとめるために、日本列島のすみずみで、「イラク派兵をやめよ」「憲法九条を守れ」の声を、広げに広げようではありませんか。(「よし」「そうだ」の声、拍手)
私たち日本共産党は、みなさんとともに全力をつくして奮闘する決意をのべて、あいさつとします。ともにがんばりましょう。(歓声、大きな拍手)