2003年11月23日(日)「しんぶん赤旗」
【ワシントン21日遠藤誠二】朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)理事会は二十一日、北朝鮮への軽水炉供与事業を十二月一日から一年間凍結すると正式に発表しました。日本、米国、韓国、欧州連合(EU)で構成される同理事会は、今月上旬にニューヨークで非公式会合を開き、事業の凍結で合意していました。
KEDOはすでに、北朝鮮政府に事業停止の決定を伝えていますが、来月にも予定されている北朝鮮の核開発問題をめぐる六カ国協議開催に影響を与える可能性があります。
今回の決定は期限を決めた事業の停止ですが、米国務省のエレリ副報道官は二十日、「軽水炉事業は未来がない」と言明し、再開しない姿勢を示しました。
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が北朝鮮での軽水炉建設中断を公式決定したことにより、北朝鮮が核開発を放棄する代償として軽水炉を提供することを決めた米朝「枠組み合意」(一九九四年)は崩壊の危機に直面しています。KEDOの声明は事業の「一年間の一時中断」。日本と韓国は再開もありうるとの立場ですが、ブッシュ政権に再開の意思はありません。
「枠組み合意」は、将来の米朝国交樹立を明記し、さらに米国が北朝鮮に対し「核兵器を使用せず、核兵器によって威嚇もしない」ことも約束した一種の「安全の保証」の意味を持つ合意。米朝間にはクリントン政権時代の「米朝共同コミュニケ」(同)もありますが、ブッシュ政権はこれらを引き継がず、「枠組み合意」だけが有効な合意として残されています。
昨年十月に北朝鮮の新たな核開発疑惑が浮上して以降、KEDOが北朝鮮への重油供給を停止し、北朝鮮は核開発再開と核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言。「枠組み合意」はすでに機能を失いつつあったとはいえ、米朝関係の将来を展望した合意が崩壊する意味は小さくありません。
十二月中の再開に向け調整が続く六カ国協議は、北朝鮮の核開発放棄と同国の「安全の保証」、米朝関係正常化などが協議される場であり、「枠組み合意」のやり直しも可能です。米朝だけの合意である「枠組み合意」ではなく、日中韓ロを含む北東アジア地域全体の平和と安全を実現する合意をめざす努力が求められます。(面川誠記者)