日本共産党

2003年10月29日(水)「しんぶん赤旗」

「財界主役」「アメリカいいなり」

日本の政治の二つの大問題にメス入れる

ほんとうの改革の党の勝利を

横浜での 志位委員長の第一声


 日本共産党の志位和夫委員長は二十八日、横浜駅西口で総選挙の第一声に立ちました。その大要を紹介します。


この総選挙の真の争点はどこにあるか

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志位和夫委員長=28日、横浜駅西口

 みなさん、おはようございます。日本共産党の志位和夫でございます(「がんばれ」の声、拍手)。いよいよ総選挙が始まりました。日本共産党は、この選挙で、自民党政治の中身を大もとから切り替えるほんとうの改革を訴えて、前進・躍進をはたす決意です。どうか、みなさんの大きなご支持を日本共産党にお寄せください。(大きな拍手)

 私はいま、「ほんとうの改革」といいましたが、日本共産党がめざす改革と、ほかの党がいう「改革」はどこが違うのか。日本の憲法には、主権在民−−「国民が主人公」と書いてあります。しかし、日本の政治の実態は、憲法と違います。「財界が主役」「アメリカいいなり」−−これがいまの日本の政治の実態ではないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。この二つの政治の大問題にズバリと正面からメスを入れ、憲法に書いてあるとおり、「国民が主人公」の日本をつくろうではないか。こういう改革を訴えている政党は日本共産党しかありません。(「そうだ」の声、拍手)

 今度の選挙は、「政権選択選挙」ともいわれています。しかし、実は、自民党と民主党は、政治の中身を見ますと、「財界が主役」「アメリカいいなり」の大枠では変わらないではありませんか。この大枠のなかで悪い政治の競い合いを始めている。これが実態ではありませんか。

 古い自民党政治の大枠のなかで悪い政治を競い合う勢力を選ぶのか、それとも古い自民党政治の枠組みそのものを打ち破って、「国民が主人公」の新しい日本をめざす日本共産党を選ぶのか−−ここに今度の総選挙の真の争点があるということを、私は訴えたいと思うのであります。(大きな拍手)

第一の改革−−財界のための

政治から国民のための政治へ

 日本共産党がめざす第一の改革は、財界のために働く政治から国民のために働く政治への改革です。

 いま、国民のみなさんが感じておられる暮らしのさまざまな不安、苦しみ−−どの問題を考えてみても、その根っこをたどると「財界が主役」の政治のゆがみにぶつかります。

無駄遣いをなくし、社会保障を予算の主役にすえる

 たとえば、社会保障の問題はどうでしょう。今年の医療費の値上げにつづいて、来年は年金の大改悪がすすめられようとしています。物価が下がるのにあわせて、お年より一世帯あたり六万円もの年金が削られようとしています。将来にわたって負担を増やし給付を減らす大改悪のレールもしかれようとしています。「高齢化だから仕方がない」というのが政府や財界のいい分です。しかし、それは間違っています。税金の使い道を間違えている。ここに原因があるのではないでしょうか。(拍手)

 日本で国民のみなさんの払っている税金のうち、社会保障に使われる割合がどれだけだか、ご存じでしょうか。わずか29%です。みなさんが十万円の税金を払ったとしますと、二万九千円しか社会保障に使われないという計算になります。それでは欧米諸国はどうか。だいたい四十数%を社会保障にあてています。予算の約半分は社会保障に−−これが世間の当たり前の姿です。日本の税金の使い道を、欧米諸国並みに約半分を社会保障にという姿にあらためれば、国民のみなさんの新たな負担がなくとも、十兆円以上の財源をつくることができます。これを年金、医療、介護にあてれば、社会保障を充実させるたしかな道が開かれます。そういう改革こそ求められているのではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 もちろん、そのためには予算のムダ遣いを一掃する大改革が必要です。一九九〇年代に、日本の公共事業は、八〇年代に(年間)二十五兆円ぐらいだったものが、どんどん膨らんで年間五十兆円になりました。アメリカと経団連・財界が、「公共事業を増やせ」と大号令をかけた。十年間で四百三十兆円を使う「公共投資基本計画」−−後に六百三十兆円に膨らみましたが、そういう無謀な計画を押しつけた結果でした。そのおかげで、全国でムダな公共事業があふれかえりました。この「逆立ち」政治をただして、公共事業のムダと浪費をなくし、段階的に半分まで減らす。五兆円まで膨らんだ軍事費にも削減のメスを入れる。池子の森(神奈川県逗子市)を押しつぶすことにも使われている米軍への二千五百億円の「思いやり予算」はきっぱり廃止する(「そうだ」の声、大きな拍手)。予算のムダ遣いを削れば、十兆円の財源をつくることができます。ムダを削って十兆円−−それを社会保障にあて、予算の主役を社会保障にすえる。この改革を日本共産党とともにすすめようではありませんか。(「よーし」の声、大きな拍手)

雇用問題−−「財界主役」のゆがみがここにも

 雇用と失業の問題はどうでしょう。小泉首相は「二百万人の雇用を増やした」と自慢しています。冗談をいってもらったら困ります。二百万人の雇用が増えたのだったら、どうして失業者が増えているのか。小泉内閣の二年半で、雇用者の数は六十三万人も減りました。多くの人々が深刻な雇用不安にさらされています。

 一家の大黒柱である中高年のみなさんのリストラは重大です。同時に、その息子さんや娘さんの世代−−若い世代の雇用問題が戦後かつてない危機的な事態になっているということを訴えたいのであります。大学を卒業しても就職率は55%、高校卒業者の就職難はさらに深刻です。五人に一人の若者がフリーターというたいへん不安定な働かされ方をしています。「自分は社会に必要とされていないのではないか」「人間として否定されたつらい気持ちになる」。若い人たちから私は訴えられました。しかし、若者が就職できないのは、若者の責任ではありません。政治の責任ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。「財界が主役」の政治のゆがみがここにもあらわれているのです。

 この六年間で調べてみると、中小企業はこんな不景気のなかで、三万人の若者の正規社員を増やしています。ところが、大企業は百八万人も若者の正規社員を減らしてしまい、パート、アルバイト、派遣労働などに、置き換えている。みなさん、人間はモノではありません。みんな心をもっている。夢や希望をもっている。セメントや鉄を買ってくるのとは違います。人間をまるでモノのようにあつかい、低賃金でこきつかい、いつでもクビにでき、職業訓練もさせず、社会保険にも入れない、「使い捨て」にするような財界の横暴勝手なやり方には未来はありません。(「その通り」の声、拍手)

 こういう財界のリストラの横暴を、「構造改革」という掛け声で応援してきたのが小泉政治です。そして、「構造改革のスピードをもっとあげろ」とハッパをかけてきたのが民主党です。こういう政治には日本経済の未来をまかすことはできないということを、私はいいたいと思うのであります。(大きな拍手)

 日本共産党の提案は、長時間労働をなくそう、ただ働き−−サービス残業を一掃しようということです。サービス残業を一掃しただけで、百六十万人の雇用が増えます。雇用が増えれば、所得が増え、消費が活発になり、日本のGDPが2・5%引き上がります。一石二鳥であります。みなさん、財界のリストラを応援する政治でなく、その横暴をおさえてルールある経済社会をつくろう−−この願いをどうか日本共産党にたくしてください。(拍手)

消費税に頼らず安心できる社会保障を築く

 消費税の大増税が、大きな争点になってきました。

 小泉首相は、「三年間は増税しない」ということを繰り返しいってきました。しかし、解散の日に発表された自民党の「政権公約」には、「上げない」とは一言も書いていません。反対に「消費税引き上げについても国民的論議を行い、結論を得る」と書いてあります。これは事実上の増税宣言です。私は、解散の日の深夜の党首討論で、この問題を小泉さんにただしました。そうしましたら、小泉さん自身が、「消費税、いずれあげなければならない」と本音をいいました。

 重大なのは、自民党と競い合うように、野党第一党の民主党も「政権公約」で、「年金の財源のため」という口実で、消費税増税の方向を打ち出したということです。菅代表は、「税率10%程度になることもある」といいました。

 なぜ、こういう動きがおこっているのでしょうか。ことのおこりは、日本経団連などの財界が、「まず税率を10%に、ゆくゆくは18%まで引き上げろ」と、大増税の号令をかけたことに始まりました。この流れのなかで、自民党と民主党が増税を競い合っている。ここがたいへんに危ないところなのです。

 増税をすすめる勢力は「社会保障のためだ」といいます。しかしそもそも、社会保障とは、なんのためにあるのか。立場の弱い方々の命と暮らしを支えるための制度が、社会保障ではありませんか。ところが消費税は、立場の弱い方々に重くのしかかる税金ではありませんか。

 私は、きのうの党首討論で、小泉さんにこの問題についての認識を聞きました。

 第一に、この税金は所得の少ない人ほど重くのしかかる逆進性をもっている。税率5%で、年収一千五百万円以上の人の消費税の負担率は1・3%ですが、二百万円未満の人の負担率は4・1%、三倍以上になるのです。

 第二に、消費税を価格に転嫁できない中小零細業者さんにとっては、まさに営業を破壊する税金です。中小企業庁の調査でも、売り上げ三千万円以下の業者さんは、52%が、「価格に転嫁しきれない」とこたえている。身銭を切って、自腹を切って、消費税を納めているということです。

 消費税が逆進性をもった税金であること、営業破壊税であること、この事実を認めますかと、私は小泉さんに聞きました。しかし小泉さんは、何も答えませんでした。この税金のあたえている痛みについて、自覚していない。痛みを押しつけながら、痛みに感じないというのは、一番悪い。(「そうだ」の声、拍手)

 「社会保障のため」という口実で、弱いものいじめの税金を増やすなどは、絶対に許されないという意思を、はっきりしめしていこうではありませんか。(大きな拍手)

 消費税に頼らなくても、安心できる社会保障を築くことができます。さきほどお話ししたように、まずムダを削れば十兆円の財源がつくれます。将来、高齢化がすすみ、新たな負担が必要になったときには、所得の少ない方には少ない負担、多い方には多い負担、毎日の食べ物など毎日の生活費には税金をかけない−−この経済の民主的原則にたって、大企業や、高額所得者に応分の負担を求める改革をおこなうべきです。日本の大企業は、ヨーロッパにくらべて、税と社会保険料の負担の重さは、五割から八割ですから、世間並みの負担を将来的には求めるのは、しごく当然です。消費税に頼らなくても、安心する社会保障を築くことができます。こういう展望を堂々としめしているのが日本共産党です。どうか消費税増税反対の声は、日本共産党にお寄せください。(大きな拍手)

第二の改革−−米国いいなりやめて

憲法生かし平和守る

 みなさん、日本共産党がめざす第二の改革は、アメリカいいなりを断ち切り、憲法をいかした平和で独立した日本をつくる改革です。

いまからでもイラク派兵中止を求める

 小泉内閣は、アメリカいいなりに、イラクへの自衛隊派兵をすすめようとしています。「戦闘地域には送らない」ということが、建前でした。しかし、イラクの現状は、全土が戦場です。私は国会でその状況をしめして、自衛隊が行く場所などどこにもないと、小泉さんを追及しましたが、「安全なところを見つけていく」(笑い)という答弁です。しかし、そうはいかないのです。国連事務総長のアナンさんは、「占領が続くかぎり、抵抗が続く」と言います。すなわち、占領軍である米軍がいるところが、「戦闘地域」になるのです。それを応援しに自衛隊が出て行けば、そこが「戦闘地域」になる。ですから、「戦闘地域には送らない」などというごまかしは、通用するものではない。憲法を踏みにじったイラクへの自衛隊派兵は、いまからでも中止せよ。このことを強く求めていこうではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

憲法九条があるために海外での戦争ができない−−米国はそれが気に入らない

 重大なのは、こういう形での憲法じゅうりんだけではなくて、憲法の条文そのものを変える動きが、本格化していることです。

 自民党は、「政権公約」で、「2005年、憲法改正に大きく踏みだします」と書きました。ときの政権党が、日程をくぎって、憲法改定を打ち出したのは戦後はじめてです。二〇〇五年といったら、再来年でしょう。ことは、さしせまっています。

 そして、ここでも重大なのは、民主党も「政権公約」で、「論憲から創憲へ」と−−「創憲」というのは新しい憲法を作るということだそうですが、公然と打ち出した。ここでも、自民、民主の競い合いがはじまっているではありませんか。

 この動きが狙っているものは何でしょうか。「戦争はしない」「軍隊をもたない」と決めた憲法九条を取り払うことです。ではなぜ、憲法九条をこんなに、目の敵にするのでしょか。これまでも自民党は、自衛隊を海外に派兵するいろいろな法律を作ってきました。しかし憲法九条があるために、「海外での戦争はできない」ということが、建前とされてきました。アメリカは、これが気にいらない。「アメリカと一緒に戦争ができる国になれ」と、太平洋のむこうから猛烈な圧力をかけてきました。この圧力に迎合して、憲法改悪の動きが起こっているのです。

 しかし、憲法九条は、日本国民が世界に誇る宝です。日本が起こした侵略戦争によって、二千万人を超えるアジアの人々が犠牲になり、三百十万人の日本国民が亡くなりました。ご年配の方々ならば多くがまだ記憶に生々しく残っていると思います。この痛苦の歴史の反省にたって、「二度と戦争はしない」とアジアと世界に誓ったのが、憲法九条ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。日本共産党は、世界に誇るこの宝を壊すいっさいのくわだてに反対します。憲法九条を守れという一票を、どうか日本共産党にお寄せください。(拍手)

安保条約を不変のものとする勢力に改革語る資格はない

 アメリカいいなりの政治は、とうとう憲法をこわすところまできました。ここが重大なところです。そうならば、アメリカいいなりの政治の根っこにある日米安保条約を、二十一世紀も続けていいのかが、いま問われているのではないでしょうか。日本の独立国としての誇りもうばい、平和も危険にさらすこの軍事同盟を、永久不変のものと考える勢力には、およそ改革を語る資格などありません。二十一世紀には、日米安保条約をなくし、神奈川にも居座っている米軍基地をなくして、基地のない日本、ほんとうに独立国といえる日本、平和な日本を、日本共産党とともにつくろうではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

自民、民主の悪政競争−−

背景に財界の大戦略

財界ひもつきの政党でどうして国民の暮らしを守れるか

 「政権選択選挙」「マニフェスト選挙」といわれているものの正体がはっきりしてきました。いまお話ししてきましたように、政治の中身を見れば、消費税増税でも、憲法改悪でも、悪い政治を競い合っているのが、自民党と民主党です。「対決」どころか、自民党政治がこれまでやれなかったような、悪い政治を、どちらが早いかと競い合っているのが、実態です。

 実は、この背景には、財界の大戦略があります。九月二十五日に日本経団連は、政治献金をおこなう際に政党を評価する「優先項目」を発表し、「消費税の増税」「法人税の減税」に賛成する政党に献金を出すという方針を打ち出しました。カネの力で政治を買収するとんでもない企てです。ところが、自民党は小泉さんが「よろこんで受け取る」といい、民主党は「こちらにもくれ」といい、財界にお金のひもをつけてくれと、ここでも競争している。私は、いいたい。財界ひもつきの政党で、どうして国民の暮らしを守れるか。私はこういう政党では、国民の立場にたった政治をになう資格がないということをはっきりといいたいのであります。(「そうだ」の声、拍手)

「政権選択選挙」で保守「二大政党」を狙う

 実は、「政権選択選挙」「マニフェスト選挙」というのも、それ自体が財界が書いたシナリオでした。昨年十月に、経済同友会という財界団体が、政界を改造する提言を発表していました。そこでは、日本には、政党の数が多すぎる、自分たちの意にかなった保守の「二大政党」にしてしまおう、ほかの政党はなくしてしまおうという計画が、あからさまに書かれていました。

 一つは、今度の総選挙は、政権党とそれに代わる野党第一党が「対決」を演出する「マニフェスト選挙」にしようと書いてあります。

 二つ目に、選挙制度も、比例代表をなくし、小選挙区だけにして、共産党などを締め出してしまおうと書いてあります。

 財界がまずいいだした。この流れのなかで、民主党が「マニフェスト」といいだし、「衆議院比例代表の定数を八十減らす」ということを、「政権公約」に掲げました。昨日の党首討論でも、菅さんはこのことをいい、小泉さんも賛成だといった。ここでも、たいへんな事態がすすもうとしています。

 いまの制度のなかで、比例代表選挙というのは、国民の民意を反映する、唯一の部分です。この部分を切り捨ててしまおう。消費税の反対の声も国会に届かない、憲法改悪反対の声も国会に届かない、そういう国会にしてしまおう。こんな民主主義破壊の暴挙を許すわけにはいかないではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 みなさん、財界の政界大改造の計画がはっきり見えてきました。おカネの力でヒモをつけて、自分の意のままに働く保守の「二大政党」をつくる。この保守の「二大政党」に、かわるがわる政権を担当させて、消費税の大増税を国民に押しつける、憲法の大改悪もやってしまおう、これが財界の野望であります。このくわだてをきっぱり拒否する選挙にしていこうではありませんか。(大きな拍手)

財界と無縁の清潔な党、日本共産党でこそ平和、暮らしを守れる

 これをやる力を持っているのは、党をつくって八十一年、財界からの献金はびた一文たりとも受け取ってこなかった清潔な党、日本共産党です。この党でこそ、財界のたくらみを打ち砕き、平和を守り、暮らしを守ることができます。どうか、みなさんの大きなご支持を重ねてお願いするものです。(「がんばるぞ」の声、大きな拍手)

 (最後に志位氏は、選挙制度についての説明をおこない、南関東ブロックでの前進のために、力を与えてほしいと訴えました)


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