2003年8月30日(土)「しんぶん赤旗」
北京で開かれていた北朝鮮の核開発問題をめぐる六カ国協議は、問題の平和的包括的解決とそのための対話継続、さらに朝鮮半島の非核化を通じた平和と安全の実現の重要性、その保証の重要性などについても共通の理解に達しました。激しい議論もあったなかで、六カ国による平和解決の過程を開始し、協議を継続するための基礎を整えたのでした。
北朝鮮の核開発計画の問題を平和的に公正に解決することは、朝鮮半島や北東アジアだけでなく、世界の平和と安定のために必要なことです。北朝鮮と米国を含む六カ国が、対話により平和的に解決する立場で一致に達したのは、いかなる国際問題も平和的解決が基本となる今日の国際政治の大道の展望を改めて裏付けました。
その背景には、核兵器廃絶、世界の平和と安全を求めるアジアと世界の諸国民、政府の強大な力があります。
それは、軍事抑圧・脅迫によって他国をねじふせようとする米国の新保守主義(ネオコン)路線の矛盾をも示唆しています。
北朝鮮代表がアメリカに、「核兵器保有や核実験実施の用意がある」と表明したとの報道がワシントンから流れました。これが事実なら、これまでの合意や北朝鮮自身の言明、なによりも核兵器廃絶と平和を願う世界の世論を踏みにじるものであり、そういう立場の誤りは厳しく糾弾されなければなりません。
この表明は「米国が敵視政策をやめないならば」としていわれたものといいます。他方で北朝鮮は、自国の安全保証が約束されるなら、核兵器計画を放棄する用意があることを明らかにしています。核兵器を交渉のカードに使うこうした危険発言に対しても、各国代表がそれなりに冷静に対処し、全体で合意に達したことは意味あることといえるでしょう。
この六カ国協議では、日朝関係がどうなるかも課題の一つでした。その点で、この間に日朝間で三度の協議がおこなわれたことは重要です。これまで北朝鮮は拉致問題は「決着済み」を繰り返していたことからみて、対話継続で合意に達したことは注目されます。
日本の一部に「拉致問題解決こそすべての前提」という議論があるなかで、日本代表は今回は「核・ミサイル、拉致などの包括的解決」を表明しました。北朝鮮も、拉致問題を含む日朝間の問題は日朝平壌宣言にもとづいて解決していきたいと表明したとのことです。交渉を通じて問題の包括的解決をうたった平壌宣言を双方が誠実に履行することが求められています。
また、今回の協議の準備と運営の過程を通じて、中国が積極的な役割を果たしてきたことは注目されます。中国が多面的外交を掲げて各国と友好関係を強化しながら、「覇権に反対し、多面的な新しい国際秩序を目指す」という外交方針の具体化の一つといえるでしょう。
(北京で小寺松雄)