2003年6月22日(日)「しんぶん赤旗」
日韓共催、アジアで初のサッカーワールドカップ(W杯)から一年。世界の人々がつどい、熱狂に包まれた各地のスタジアムは、いまどうなっているのでしょうか。第三セクターや民間委託で黒字基調の札幌と神戸以外は、すべてマイナス収支。しかし、採算性だけでははかれない、“身近でスポーツを楽しみたい”という住民の声に公共スポーツ施設としてどうこたえているか。
中高生や公共団体向けに思い切った“料金設定”をした宮城の例などはありますが、全体的には、まだ料金には割高感があります。Jリーグチームの本拠地であったりと、条件もさまざまです。四苦八苦の中で努力する各地の競技場の取り組みをまとめました。
日韓共催で、とりわけ若い世代に両国の歴史を踏まえた草の根の共生の立場が芽吹いたこと、ボランティアの活躍なども通じ世界中の人々との交流が広がったこと、最高水準の試合に直接触れサッカー文化が各地に花開いたこと、などなど、昨年のサッカーワールドカップ(W杯)は、数々の“遺産”を私たちに残しました。キャンプ地を含め、W杯に関係した少なくない自治体で、W杯をきっかけにイベントやボランティアへの住民の自主参加が増えるなど、スポーツ振興を軸にした新しい住民の息吹も感じられます。
今求められているのは、これらを一過性のものにせず、“遺産”を根づかせ発展させるために、国や地方自治体が何をすべきかについて衆知を集めることでしょう。
一方で、巨大競技場の建設費の借金(地方債)返済や赤字運営など、“負の遺産”の適正な処理も課題となっています。こうしたツケを住民にかぶせる動きは、公共スポーツ施設の役割からすれば本末転倒です。
必要なのは、大型開発など本来の無駄を削り、国や自治体のスポーツ予算を抜本的に改善して、いまあるスタジアムなどの安定した運営に手をさしのべることです。
W杯競技場を単なる「記念碑」にしないためには、それらを「スポーツ文化の発信地」として積極的に生かしていくことが重要です。
宮城や静岡や大分などのW杯施設で、市民の利用料を低額に抑えたり、施設の一般開放が行われたり、ボランティアが活躍しているなど、苦戦しつつもそれぞれにがんばっている姿には頭が下がります。それだけに、各自治体が住民の理解と合意と参加のもとに、「自治体らしいスポーツ行政」を確立することが、“W杯の遺産”を生かす、もっとも確かな道ではないでしょうか。(2002年W杯推進国会議員連盟常任幹事)
過去のサッカーワールドカップ(W杯)の開催国で、大会後に日本のようなスタジアム問題が浮上した国というのは、聞いたことがありません。
日本の場合には、国体の開・閉会式やW杯の数試合のためだけに、巨大な競技場が交通の便の悪さもいとわずに造られてしまった。発想の出発点が、欧米のサッカー・スポーツ文化とはまったく異質だったこと自体が問題でした。
一方で、W杯を機にサッカーが地方の文化として定着した新潟や大分などでは、W杯スタジアムでの地元プロチームの試合に市民数万人がつめかけ、他の大都市での試合に負けない楽しい応援を繰り広げています。
それぞれの地域の財政状況などのバランスの中で、身近にあって満足できるスポーツ施設としてW杯スタジアムをどう守り、育てようとしているのか。そうした努力に注目しています。
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多目的ドームとしてサッカー、野球、その他イベントにほぼフル稼働。草野球(50人で20万円から)にも利用でき、昨年度68回の利用実績。トレーニング室(500円)、サブグラウンドも含め、のべ14,000人の市民が昨年度一般利用した。
4月から、中高生の大会は9割引(6,140円)、公共団体なら8割引で利用できる。一般は58,700円(スタンド未使用)から。月に1回程度の一般開放も4月から実施。一般200円、高校生以下100円で、これまでに3,100人が芝の感触を楽しんだ。
W杯後に一種陸上競技場に改修し、14日にトラック部分が竣工した。トラックの個人利用は一般200円、学生100円で、個人開放などはこれから。グラウンドは一般が午前22,200円、午後29,600円で利用可。学生はその半額となる。
サッカー専用競技場。アマチュアは基本使用料317,540円(1日)で利用できる規定だが、Jリーグの試合や、全日本選手権の予選などで、実際には日程的余裕はない。Jリーグの試合のない日に、ピッチ(芝面)以外の一般開放がある。
一般利用は不可。フットサルコートは6,000〜12,000円で利用可。平日の夜はほぼ毎日利用者がある。サブグラウンドも1時間7,000円での一般利用を調整中。水、土、日曜のスタジアム見学ツアー(おとな500円、小学生200円)がある。
子どもたちのスポーツ教室などにも利用されている。アマチュアは午前21,000円(3時間)、午後・夜各28,000円(4時間)で利用可。トラック開放日は、一般200円、学生100円、グループ1,000円で、昨年度、のべ6,652人が利用。
今秋の国体開閉会式に使用。11月には障害者の大会も。グラウンドは午前・午後各29,500円、夜41,300円、終日100,300円などで一般利用可。高校生以下は半額。見学(芝面以外)は無料。予約をすれば、ボランティアが案内をしてくれる。
体育の日の市民スポーツ祭典や、大阪市のマラソン大会、小学校のスポーツ交歓会などにも利用されている。メーンスタンドを含む使用料は、一般で休日216,000円、平日168,000円。ただし、休日はJリーグの試合などでいっぱい。
W杯時の臨時スタンドを撤去し、開閉式ドームに改修。月に1回、1時間10,000円ほどで一般開放を考えているが、今年度は無理。マシンジム、プールなどの会費制スポーツクラブ会員(1,200人)は、人工芝部分でのジョギングもできる。
幼稚園の運動会や、地区の駅伝大会なども行われた。一般は1時間9,100円で、高校生以下はその半額。先日行われたフリーマーケットには14,000人の入場者があった。600人が参加する紙飛行機大会を行う計画もある。