2003年5月1日(木)「しんぶん赤旗」
三十日未明までもつれ込んだ第十回南北朝鮮閣僚級会談が、朝鮮半島の核問題を「対話を通じて平和的に解決するために引き続き努力する」という原則を再確認した直後、北朝鮮外務省は米国に対抗する「抑止力を持つ」と核兵器保有を示唆する談話を発表しました。
今回の会談は、北朝鮮が北京での米朝中三国協議の際に「核兵器保有」を言明したことに対する国際的な批判が高まるなかで開かれました。
韓国側首席代表の丁世鉉・統一相は、北朝鮮の「核兵器保有」発言を重視、「事実ならば南北間の朝鮮半島非核化共同宣言(一九九二年)に違反する」と主張し、「核兵器と核関連施設の廃棄」を強く要求。しかし、北朝鮮側首席代表の金゚星・内閣責任参事は、この要求に応えず、“核問題は米朝間の問題”という立場に固執しました。
閣僚級会談が最後の詰めの協議を続けていた二十九日夜、盧武鉉・韓国大統領はブッシュ米大統領と電話会談し、(1)三国協議で北朝鮮が示した提案を検討したうえで対応を決める(2)平和的な解決のために共同戦略と具体的な方法を協議する―ことで合意しました。
米国、北朝鮮双方と“平和的な解決のために協力する”ことを確認することで、韓国が核問題の「当事者」として役割を果たそうという狙いが込められています。
北朝鮮外務省の談話は、朝鮮半島非核化共同宣言が「完全に白紙化」したとし、「正当防衛手段として抑止力を持ったことだけで『脅迫』や『恐喝』だというのか」と主張。ブッシュ米政権が北朝鮮を「悪の枢軸」「核の先制攻撃対象」に名指ししたことを「脅威」だと批判しています。
談話はさらに、北朝鮮の核問題を国連安保理で協議することを強く警戒し、米国が「国連の名を再度盗用するなら、われわれはやむを得ず、非常時に取る行動を予見しなければならないだろう」と述べました。これは、安保理による制裁の可能性を示唆する米政府高官の発言への反発と見られます。北朝鮮はこれまで、安保理による制裁を「宣戦布告と見なす」と主張してきました。
こうした対応の背景には北朝鮮が繰り返す“イラク戦争の教訓は抑止力の保有”という「軍事優先」思想があります。
しかし、核の脅威に軍事力で対抗する、という対応は、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定をさらに危険にさらすことになります。南北会談で「平和的解決」に合意しておきながら、「物理的な抑止力」を正当化することは、緊張をあおる行為と言わざるを得ません。(面川 誠記者)