2018年1月20日(土)
主張
トランプ就任1年
際立つ「米国第一」の危うさ
トランプ米大統領就任から20日で1年です。いま大問題となっているのが、トランプ氏の「便所のような国」という発言です。移民問題を議論する場で、ハイチやアフリカ諸国をこう形容したとされるもので、米国内のみならず、アフリカをはじめとした諸国から、批判が相次いでいます。蔑視、分断、混迷の「米国第一」を象徴しているかのようです。
手前勝手な主張繰り返し
外に向かっては、昨年1年間、トランプ外交は、従来まがりなりにも米国の責任を表明してきた、国連をはじめとした多国間機構を無視・軽視し、手前勝手な主張を強めるものでした。その一部を挙げただけでも、オバマ政権時代にはともかくも掲げた「核兵器のない世界」という目標の敵視、核戦力強化の公言、地球温暖化防止のパリ協定からの離脱表明など、いずれも大きな逆行ぶりです。エルサレムをイスラエルの首都とする認定宣言は、国連の場での孤立の深まりにつながりました。
トランプ外交は、財政難といった国内事情などから世界への介入を自制するという種類の「孤立主義」では決してないことも明らかとなりました。アフガニスタンへの増派、シリアへのミサイル攻撃をはじめ、各地への軍事介入は強化され、軍事費が増強されています。北朝鮮問題では、軍事選択肢への言及を繰り返しています。
トランプ氏は昨年12月、米国の安全保障について論じた演説で、「好むと好まざるとにかかわらず、競争の新しい時代をわれわれはたたかっている。激しい軍事・経済・政治の競争が世界で展開されている」と強調しています。ルールに基づく国際協調や多国間協力を否定した、“勝者か敗者か”という「ゼロサム」の世界観です。そこには、世界は米国の思うままに動かすことはもはやできないという“不都合な現実”への粗雑であからさまな反発も透けて見えます。
国内をみても、移民問題、人種問題で米社会の分断が深刻化し、傷が深まっています。中東諸国を狙い撃ちした入国制限、親に連れられて米国に来た非正規移民の保護措置はく奪、白人警官による不当暴力などが後を絶ちません。極右・白人至上主義団体による暴力行為も発生しました。格差問題では、「労働者の味方」を自任するトランプ氏ですが、やったことは大企業・金持ち減税、社会保障削減、環境と金融面での規制緩和などで、さらなる格差拡大への深刻な懸念を招いています。
そんなトランプ流「米国第一」への本格的な審判となるのが、11月の中間選挙です。下院の全議席と上院の3分の1の改選が行われ、結果次第では、トランプ政権の命運に大きな影響を与えます。
異常な対米追随問われる
世界はいま、核兵器禁止条約に象徴されるように「大国中心」の世界が過去のものになっただけではなく、トランプ大統領のもとで「米国主導の国際秩序」が壊れつつあるという、二重の大変動の最中にあります。
「私の仕事は世界を代表することではなく、米国を代表することだ」(昨年2月の施政方針演説)と断言したトランプ氏。世界への「責任放棄」だとの批判が内外から聞かれるなか、同氏に無批判に付き従う安倍晋三政権の異常な従属外交も厳しく問われています。