2017年12月26日(火)
ペルー元大統領フジモリ氏に恩赦
市民 “政治取引”と抗議
南米ペルーのクチンスキ政権は24日、人権侵害などの罪で禁錮25年の刑に服していたアルベルト・フジモリ元大統領(79)への恩赦を発表しました。同氏の在任中に特殊部隊によって暗殺・誘拐などの被害にあった犠牲者家族らは決定に抗議。恩赦はクチンスキ氏自らの汚職追及を回避するための政治取引だとみなす、多くの市民が反対デモを繰り広げました。(菅原啓)
大統領府発表の声明は、医師団がフジモリ氏について「進行性の不治の病に侵され、収監は生命に関わると判断した」として、人道的見地から恩赦を決めたと述べています。
現地からの報道によると、発表を受けて市民ら数百人が首都リマ市内中心部のサンマルティン広場に集まり、恩赦反対のデモを繰り広げました。
フジモリ氏が大統領在任中(1990〜2000年)に指揮した特殊部隊の作戦で殺害された犠牲者の写真を掲げた家族も参加。クチンスキ氏が昨年の大統領選でフジモリ氏への恩赦はしないと公約していたころから、プラカードには「裏切り者」「犯罪の共犯者」など大統領を非難する厳しい言葉が並びました。
クチンスキ大統領には、ブラジルの大手建設会社が絡む汚職疑惑が浮上。国会に弾劾決議案が提出され、窮地に陥っていました。ところが、21日の採決ではフジモリ派の最大野党「フエルサ・ポプラル」幹部で元大統領の次男ケンジ氏ら10人の議員が棄権に回ったことで、決議案は否決されてしまいました。
英BBCによると、多くの政治評論家が「国会でのケンジ氏の投票への見返りとして、フジモリ氏は恩赦されるだろう」と指摘していました。
フエルサ・ポプラルのサラサル議員も「クチンスキ氏が大統領の地位への留任と(フジモリ氏の)恩赦を交換したことは、ペルーにとって残念なことだ」と指摘しています。
恩赦は与党内でも反発を呼んでいます。クチンスキ氏が率いる与党「変革のためのペルー国民」のベラウンデ議員は発表を受けて、ツィッターで議員辞職を表明しました。