2017年12月25日(月)
サポーターと考える「日本改革の展望」 シリーズ第1弾
カジノで経済再生?何考えてんねん
座談会(上)
日本共産党前衆院議員 清水 忠史さん
民青大阪府委員長 酒巻 眞世さん
カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表・阪南大学教授 桜田 照雄さん
「カジノで経済再生? なに考えてんねん」―日本共産党の清水忠史前衆院議員が、カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表の桜田照雄・阪南大学教授、民青大阪府委員会の酒巻眞世委員長と、カジノにみるアベノミクスと経済再生の展望について語り合いました。シリーズ「サポーターと考える『日本改革の展望』」の第1弾です。
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●アベノミクスの恩恵?実感なし
酒巻 アベノミクスの恩恵なんて感じられません。青年と対話すると状況は深刻です。大学を卒業して就職した会社がブラックで、残業時間を申請しても訂正される。資格取れと教科書を買わされて、しんどくて3カ月ぐらいで辞めて、スーパーのパートで月10万円ぐらい稼ぎながら月3万円近くの奨学金を返していると話していました。
給料が安い。将来が不安。年金もらえるかどうかわからへん。教育に金かかるから子どもを産むのはあきらめようか。アベノミクスの恩恵のおこぼれは、いつまで待っても落ちてきーへんやんけ。―これが青年の声です。
清水 アベノミクスは安倍さんだけが笑う。だから、「安倍のみクスッ」(笑い)。3本の矢、新3本の矢。ある自民党の議員に全部言えますかと聞いたら、「忘れた」(笑い)。6本の矢が景気回復の的には1本も当たらずに毒矢となってわれわれの懐に刺さりまくっています。
それでも安倍首相は「道なかば」という。下から読んだら「ばかな道」(笑い)。アベノミクスは、一握りの大金持ちと大企業だけがもうかって、働いているのに給料は増えない。格差と貧困が広がっています。
桜田 株にしてもギャンブルにしても、個人と社会のつながりについて、いまの若い人たちに考えてほしい。株でもうけている人たちは、安倍政権では株は下がらないと安心しきっているけど、これだけカネをじゃぶじゃぶ注ぎ込んで、どうやって始末をつけるのか。
自己責任というよりも、連帯や相互扶助を大切にしなければならない。国民意識の大転換が必要なんです。
●カジノが「経済の起爆剤」?
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酒巻 大阪ではカジノが話題ですよね。カジノって聞くと、映画の世界ではラスベガスのようにキラキラまぶしくて、上流階級、金持ちの娯楽の場という感じ。でも、それが「経済の起爆剤」になるとか言われると、「えー、ほんまかな」と思う。
桜田 カジノは胴元が絶対に損をしない。僕と酒巻さんが100万円ずつ出して賭けをしたとする。僕が勝ったら全部もらいますよ。僕が負けたら95万円しか渡さない。5万円は手数料。この手数料で稼ぐから、ばくちを続ける限り胴元の僕は絶対に損をしない。経済的取引というのは等価交換でなければならないが、賭博は不等価交換。経済のルールに反するから否定されてきた。
清水 少し前までは、この国で本気でカジノをやろうなんて、誰も想像しなかった。
米大統領選で、自らカジノを経営していたトランプが勝ったことが大きい。もうひとつは、アベノミクスの明確な失敗ですよ。賭博まで解禁しなければ、色あせたアベノミクスをバラ色に塗り替えることができない。
桜田 トランプの一番の支援者がカジノのオーナー。25億円政治献金している。安倍首相がトランプに忖度(そんたく)してカジノをやれと号令を出したと言われています。
酒巻 なぜ、維新は安倍首相の応援を受けてカジノを大阪に誘致しようとしているんですか。
桜田 大阪には土地がないからと、ゴミで埋め立て工業用地を広げたが、地盤が悪くて高い建物が造れない。そこで、集客産業に切り替えた。カジノはばくち。スリリングな世界です。観光理論の常識からすれば、カジノは「鉄板」。はやらないはずはない「観光資源」だ。
しかし、カジノは他人の不幸の上に成り立つビジネスです。自己責任だからと連帯や助け合いがなくなっていく。カジノに反対するたたかいは、そういうギスギスした社会を変えていくたたかいだと思っています。
清水 カジノって地域が潤うとか税収が増えるとかいうけれど、経済的な効果だけでなく損失もある。韓国では失業、退職による経済的損失、依存症による医療費、犯罪による裁判費用、刑務費用だとか、もろもろ合わせると、年間7兆7千億円も損失があり、経済効果の4・7倍にもなる。
結局、狙いは大型開発と日本人の財布ですよ。カジノと大阪万博をくっつけたのにも、カラクリがあります。カジノ誘致の候補となっている夢洲(ゆめしま)は、鉄道も整備されていない人工島です。吉村洋文大阪市長もカジノ業者に鉄道整備をやらせると言っていたのに、カジノ業者の反発を受け、それなら万博を呼ぶことによるインフラ整備だったら、税金を使っても文句が出ないだろうと踏んだ。
万博開催は半年。終わったらカジノ。動機が不純です。
酒巻 いやあ、カジノっていらんな、とつくづく思いますね。
桜田 給料が安い安いと文句言うな、株など投資でもうけろ。ギャンブルでもうけろ。自己責任や。それが安倍政権の本音です。
●切実な問題解決するには?
酒巻 それ、行政としては無責任。自己責任やなんて。青年でいま切実なことは、学費、奨学金とブラック企業。展望ないなという感じですよね。株だ、ギャンブルだではなく、切実な問題を解決してほしいですね。
清水 日本共産党は第27回党大会決定で「1%の富裕層や大企業のための政治でなく、99%の国民のための政治を」と呼びかけ、格差と貧困をただす経済民主主義の四つの改革を掲げました。(1)税金の集め方の改革―「能力に応じて負担する、公正・公平な税制」(2)税金の使い方の改革―「社会保障、若者、子育て中心の予算」(3)働き方の改革―「8時間働けばふつうに暮らせる社会」(4)産業構造の改革―「大企業と中小企業、大都市と地方などの格差を是正」―です。
大学授業料を段階的に半減し、給付型奨学金を創設することや「サービス残業」を根絶し、「ブラック企業」を規制することも提唱しています。
最低賃金はどーんと上げることが大切です。アメリカのマクドナルドで働く人の最低時間給は15ドル、1500円以上。実際やってみると、従業員のモチベーションも上がる。給料が増えたらモノを買う。地域の景気が良くなる。
桜田 誇りを持って仕事をしたいという気持ちを大事にしないといけませんね。
清水 最低賃金は全国一律にすることが大事です。川を越えて県をまたぐと最低賃金が変わる。都会と地方でも大きく違う。全国一律にすれば、地方で働く若者も増え、地方経済が活気づきます。
庶民のまち、大阪は、中小企業支援、商店街振興は前提ですけど、子育て、介護の先進都市を目指すべきだと思いますね。大阪府内は、どこでも待機児童ゼロにし、親の介護を心配することなく現役世代が働けるようにすることです。ところが、維新の府・市政は、国の制度の改悪に輪をかけて自治体で公立保育園の統廃合をし、維新府政が特別養護老人ホームの補助金を削る。これでは逆行するばかりです。介護や子育ての充実で安心して働け、介護施設や保育所で働く人の待遇改善をしていけば、大阪はもっともっと元気になっていく。
酒巻 カジノ誘致なんかに熱中している場合じゃないですね。(つづく)