2017年12月6日(水)
主張
企業不正の広がり
信用崩した構造 大本から正せ
製造業大手による品質データの改ざんが深刻な広がりをみせています。広範な製品に使用されている素材メーカーのデータ書き換え・偽装は神戸製鋼所、三菱マテリアルにつづき、日本経済団体連合会(経団連)の榊原定征会長の出身企業である東レにまで波及しました。どこまでまん延しているのか、構造的なゆがみではないか。徹底した原因究明をすすめ、日本のものづくりへの信用を失墜させている不正の大本にメスを入れることが求められます。
認識の甘さあらためよ
神戸製鋼グループはアルミ・銅・鉄鋼の部材、三菱マテリアルの子会社はゴム製の「シール材」、東レの子会社はタイヤの補強材―。次々と判明した製品検査データの改ざんは、飛行機、自動車、原子力発電所など幅広い分野で素材として使われているものです。取引した企業だけでなく、多くの国民が不安をつのらせるのは当然のことです。
不正が発覚した企業側は「顧客(民間企業)との関係で安全上の問題はない」などと、詳細を公表することに消極的・否定的ですが、航空機、自動車などの利用者は国民・消費者です。消費者を事実上置き去りにした企業側の姿勢も問題です。
共通しているのは、根深い隠ぺい体質です。神鋼ではこれまで何度も不正が繰り返されてきました。三菱マテリアル子会社は2月には不正をつかんでいましたが、10月まで「不適合品」を出荷していました。東レ子会社では昨年7月には問題がわかっていました。企業風土や組織のあり方が問われています。
経団連は、会長出身企業の東レで不正が判明したことにあわてて、約1350社の会員企業に品質問題の実態調査の徹底を要請しました。個別の企業だけに対応を任せていられない事態となっていることをうかがわせます。
ところが、監督官庁の世耕弘成経済産業相は「特異な事案」「経産省がやらなくても会社は内部調査をやっている」と国会で答弁するなど、まるで人ごとです。甘い認識をあらためるべきです。
不正の背景について、度重なるリストラでの人減らしによる疲弊を指摘する声が現場から上がっています。長年不正が繰り返されてきた神鋼では、従業員はピーク時の3分の1に激減し、非正規労働者がふえ、過密労働が横行しており、40〜50代の基幹を担う労働者が不足しているといわれます。安全で高品質のものづくりの現場を取り戻すためには、異常なリストラ、人減らしに歯止めをかけることが不可欠です。
経団連の姿勢が問われる
東レの不正は、榊原経団連会長が同社の社長・会長だった時期に行われていました。経団連が11月に改定したばかりの「企業行動憲章」には「社会からの信頼を失うような事態が発生した時には、経営トップが率先して問題解決、原因究明、再発防止等に努め」るとあります。この言葉にてらしても、一連の不正での企業経営者の姿勢はあまりに不誠実です。
榊原会長は安倍晋三首相に対し、消費税増税や社会保障改悪など「国民の痛みを伴う改革」の実現を迫っていますが、そんなことを口にする資格があるのか。国民は到底納得できません。