2017年11月16日(木)
砂川再審 高裁も認めず
元被告「政治意図感じる」
特別抗告へ
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米軍立川基地(旧砂川町、現東京都立川市)の拡張に抗議する人たちの一部が基地内に立ち入ったとして起訴され、米軍駐留の合憲性が争われた1957年の砂川事件をめぐり、有罪が確定した元被告ら4人による再審請求即時抗告審で東京高裁(秋葉康弘裁判長)は15日、再審開始を認めなかった東京地裁の判断を支持し、弁護側の即時抗告を棄却する決定をしました。元被告らはただちに声明を出し、「司法の独立を投げ捨て、政府に迎合した不当な決定である」と抗議。最高裁に特別抗告すると表明しました。
砂川事件の一審判決(59年3月30日の伊達判決)は、米軍の駐留は違憲として被告人を無罪としました。しかし、判決を不服とした国側が高裁を経ずに最高裁に「跳躍上告」し、同年12月に最高裁が一審判決を破棄、差し戻し。地裁で罰金刑が確定しました。
ところが、国際問題研究者の新原昭治氏らによって、当時の田中耕太郎最高裁長官が駐日米国大使らと密議を繰り返し裁判の見通しを伝えていたとの米機密公電が判明。60年1月の日米安保条約改定を前に判決を急いでいた経過が明らかになっています。元被告らは、これらを新証拠として2014年6月に再審請求しました。
弁護側は、田中長官が裁判情報を事件被害者である米側に伝えたことが、公平な裁判を受ける権利を保障した憲法37条1項に違反し、差し戻し後に裁判を打ち切る「免訴」とすべきだったと主張しました。しかし、高裁決定は、弁護側の主張は免訴事由に当たらず、再審請求は認められないとしました。
記者会見で元被告の土屋源太郎さん(83)は「安倍政権は砂川事件の最高裁判決を曲解して集団的自衛権行使や安保法制の法的根拠に使っている。だから、再審を開始したら大変な問題になるという政治的な意図や背景を感じざるをえない」と述べました。
元被告の故坂田茂さんの長女和子さん(60)は「公平な裁判だったかどうかの検討なしに免訴にあたらないということで済まされてしまっては、父の無念は晴れない」と語りました。
元被告の武藤軍一郎さん(83)は伊達判決について、「日本の平和、戦争をしないという点から米軍の駐留を憲法との関係で真正面から受け止めて判断した血の通った宝の判決」だと述べ、改めて意義を強調しました。
弁護団は、高裁決定は法律論で再審を認めなかったものの、田中長官が米側と密議した事実については高裁でも否定できなかったとも指摘しました。