2017年11月12日(日)
保育「無償化」公約どこへ
安倍政権 待機児の受け皿にしながら
認可外は対象外!?
総選挙で「すべての子どもたちの幼稚園や保育園の費用を無償化する」(9月25日)と表明して、保育「無償化」を公約した安倍晋三首相。しかし、選挙が終わったとたん「認可外」は対象外とする動きが報じられ、保護者を中心に怒りが沸騰しています。政府は、批判の高まりに、あわてて一部の認可外は対象に含める方向で調整を始めたとされるものの、無償化をめぐる迷走ぶりは、安倍政権が、少子化対策に真剣に取り組む決意も展望もないことを示しています。
(佐久間亮)
認可保育所の増設こそ
「二つの国難を乗り越える」―。安倍首相は、解決すべき国難として北朝鮮問題とともに少子化問題を衆院解散の理由にし、少子化問題解決の目玉として消費税10%増税の使い道を見直し、すべての3〜5歳児、低所得世帯の0〜2歳児で幼稚園・保育園の無償化を実現することを掲げました。認可外を無償化から外すことは、仮に一部を無償化の対象にしたとしても明らかな公約違反です。
保育料は多くの自治体で軽減策がとられているものの、国の基準が高すぎるため子育て世帯の家計を圧迫しています。事業者が自由に保育料を決めることができる認可外はさらに高く、月額10万円を超えることも珍しくありません。保育料の軽減・無償化は認可外ほど切実です。
厚生労働省の2013年の調査では、認可外利用者の約7割が認可への入所を検討したものの、「空きがなかった」(40・2%)、「預けたい時期に入れなかった」(17・5%)などとして認可外(ベビーホテル除く)を選択したことが示されています。
認可外の利用者の多くは、認可保育所を希望したものの定員から漏れたり、条件が合わなかったりして、やむなく認可外を利用しているのが実態です。圧倒的多数の保護者が求めているのは、希望すれば、就学前まで安心して通うことができる認可保育所の増設です。
無償化にかかわり、政府側からは、保育士の配置や面積の基準が緩い認可外まで無償化すると、政府が認可外を推奨していると受け取られかねないとの声がでています。
これほどひどい理屈はありません。認可保育所の増設を求める保護者の願いに背を向け、基準緩和と認可外の促進で待機児問題に対応しようとしてきたのが、安倍政権自身だからです。
安倍政権は、6月に策定した「子育て安心プラン」の待機児対策の柱のなかに、認可外の一つである「企業主導型保育」の促進を盛り込み、今年度中に定員を7万人に広げる方針も示しています。同じく認可外の「自治体単独保育施策」(東京都の認証保育所など)も待機児の受け皿としてきました。
15年には基準の緩い小規模保育を認可の対象に加え、今年の通常国会では小規模保育の対象年齢を拡大するため国家戦略特区法を改悪しました。
いまになって認可外を推奨していないかのようなポーズをとり、基準の違いで子どもを差別するのは、全く筋が通りません。
財源 消費税は本末転倒
少子化対策の充実をいうなら、これまでの保育施策の抜本的な見直しが必要です。保育の無償化だけでなく、認可保育所の大幅な増設、全産業平均と比べ月額9万円も低い保育士給与や低すぎる配置基準の引き上げを行うべきです。
少子化対策の財源として、子育て世代のくらしを直撃する消費税増税を充てるのも本末転倒です。消費税増税は中止し、大もうけをあげている大企業や富裕層を優遇する不公平税制を改めるなどして財源を確保すべきです。それが、ほんものの少子化対策ではないでしょうか。