2017年11月1日(水)
海自輸送艦衝突裁判
新たな危険生じさせた
広島地裁 遺族・弁護団が指摘
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海上自衛隊の大型輸送艦「おおすみ」が2014年、瀬戸内海の広島沖で釣り船「とびうお」と衝突、船長と釣り客ら3人を死傷させた責任と損害賠償を求める訴訟の第7回口頭弁論が31日、広島地裁(龍見昇裁判長)で開かれました。
遺族らと原告弁護団はこの日の弁論と準備書面で、おおすみの針路、速力が「とびうおに対する新たな危険を生じさせた」として、おおすみが針路変更と速力を減じるなどで追い越し態勢を解消したなら衝突は避けられ、これをしなかった過失責任は大きい、と指摘しました。
「新たな危険」は、おおすみが午前7時53分28秒ごろに針路を209度から180度に左転し、衝突(午前8時0分0秒とする)の2分58秒前の7時57分02秒に17・4ノットの定針、定速で航行したことをあげました。
原告は、これを「とびうおに対し、追い越し態勢での接近」と判断し、「とびうおに対する新たな衝突の危険を生じさせたものであり、避航義務はおおすみにあった」としました。
しかしおおすみは、この危険性を解消する義務がありながら、(1)針路と速力の変更をしなかった(2)最後の段階で同艦船の左舷船首に位置していたとびうおとの衝突を避けるべく左転してキック(艦尾が反対側に振れる)を利用すべきところを右転した―は過失であると指摘しました。
被告・自衛隊側の「釣り船の突然の右転が原因」との主張に対し、「とびうおが右転し、おおすみに衝突したのであればとびうおの船首部にあるはずの損傷がなく、右舷船側部にあった」と反論、とびうおの右転を否定しました。被告に現場検証の結果を記載した書面の提出を求めました。
おおすみが「初めて衝突の危険を感じた」のが衝突直前の午前7時59分37秒すぎ、とされてきました。しかし、その31秒前の午前7時59分06秒の艦橋での当直士官らの情報記録に「避けられん」との発言があると前回の口頭弁論で原告が指摘した件について被告側は「確認できる」と認めました。
次回期日は来年1月16日午後3時。