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2017年9月2日(土)

関東大震災での朝鮮人虐殺 数千人が犠牲

今に至るも調査しない政府

歴史的事実を“隠ぺい”

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 1923年9月1日に発生した関東大震災で、軍隊、警察、自警団などによる朝鮮人の虐殺が発生しました。ところが、自民党の古賀俊昭東京都議が3月の都議会で、虐殺は“防衛”であったとか、被害者の数の根拠が希薄であると主張。小池百合子都知事が、歴代の都知事が出してきた関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼の辞を出さないと表明しました。朝鮮人虐殺の原因と実態はどのようなものだったのでしょうか。

 (若林明)


写真

(写真)虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典=1日、東京都墨田区

根拠ない「暴動」

 関東大震災では10万人以上の死者・不明者を出しました。1日夕方から「社会主義者と朝鮮人の放火多し」などという流言が拡大。政府は2日、戒厳令を施行し、軍人や警察官による流言も目立つようになりました。

 警察や地方行政を統括する内務省は3日朝、警保局長名で全国の知事宛てに、「(大震災を利用し)朝鮮人は各地に放火し、不逞(ふてい)の目的を遂行せんとし、現に東京市内において爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり」「鮮人の行動に対して厳密なる取締を加えられたし」との電文を出しました。指令を受けたこともあって、3日以降、全国で自警団がつくられました。

 しかし、司法省が同年11月にまとめた「震災後における刑事事犯およびこれに関連する事項調査書」は、朝鮮人による殺傷事件は2件、傷害3件で、被疑者はすべて不詳としています。殺人は被害者も不詳です。蜂起、放火、投毒等は「一定の計画の下に脈絡ある非行をなしたる事跡認めがたし」と否定しています。内務省の電文は、根拠のない「朝鮮人暴動」を事実であるかのように偽って伝えるものだったのです。

 内閣府の元に設置された中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門調査会」が2008年3月にまとめた「1923 関東大震災報告書【第2編】」は、虐殺の背景を「日本が朝鮮を支配し、その植民地支配に対する抵抗運動に直面して恐怖感を抱いていたこと」と「(朝鮮人への)無理解と民族的差別意識」を指摘し、「反省が必要」と述べています。

「最悪の事態」と

 田中正敬(まさたか)専修大学教授は「日本の対外戦争が朝鮮人への差別意識を高めていきました。日清戦争も日露戦争も朝鮮を戦場にしています。その過程で、朝鮮人に対する迫害と殺りくを繰り返します。その経験を通じて差別意識が強まっていきました」と語ります。

 最新の研究は、虐殺された朝鮮人は数千人だとしています。中央防災会議の報告書は、正確な被害者数がつかめないとしながら、「死傷者の1〜数パーセントにあたり、人的な損失として軽視できない」と記しています。さらに、虐殺について「大規模災害時に発生した最悪の事態」と述べています。

 田中教授は、被害者の人数が確定できない要因を、事件後の政府が事件を隠そうとしたことと、戦後も現在に至るまで政府が調査をしていないことだと指摘します。その上で、「被害者の数があいまいだということで、事件を全否定しようとする意図を感じます。歴史的事実の“隠ぺい”と考えざるをえません」と言います。


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