2017年9月1日(金)
主張
麻生副総理の発言
国際社会に通用しない暴言だ
安倍晋三内閣の副総理・財務相でかつて首相や外相も経験した麻生太郎氏が、8月29日の自らの派閥研修会で「(政治は)結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもだめだ」と発言し、ヒトラーの「動機」を評価するのかと批判を浴び、撤回しました。ヒトラーとはいうまでもなく戦前のドイツでナチスを率い独裁政治を行い、ユダヤ人などの大虐殺(ホロコースト)や周辺国への侵略で第2次世界大戦を引き起こした人物です。結果は批判しても「動機」を評価するようでは国際社会に通用しません。
繰り返し「動機」正しいと
麻生氏は派閥研修会翌日の30日になって発言を撤回するにあたり、「ヒトラーは動機についても誤っていた」などと言い訳しています。しかし麻生氏の弁解は言葉通り受け取れません。麻生氏は当初の講演で、「いくら動機が正しくても、何百万人も殺しちゃったヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもだめなんですよ」と2回も「動機」が正しかったと発言しており、翌日になって突然その「動機」が間違っていたと言い出しても、全くつじつまが合いません。
もともと戦後長く首相の座にあった吉田茂首相の孫にあたり、自らも首相などの政治経歴を持つ麻生氏が、ヒトラーを評価するような発言をすれば、国内はもとより国際的にも孤立化を招くことは百も承知のはずです。にもかかわらず麻生氏は今回だけでなく2013年にもヒトラーに言及して批判を受けており、麻生氏のヒトラーに対する肯定的な評価は根っからのものという以外にありません。
麻生氏は13年の講演で「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に代わった。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」と発言しました。発言自体は12年末に政権に復帰した安倍政権に改憲をけしかける意図だったとみられますが、戦前のナチスの独裁は、「誰も気が付かないうちに」ワイマール憲法がナチス憲法に変わったものではありません。ヒトラーがナチスを動員し、ワイマール憲法のもとで当時の大統領や議会に圧力をかけ、「緊急事態令」や「全権委任法」などを乱発して、暴力的に憲法を停止させたのが実態です。「ナチス憲法」などというものは存在しません。
麻生氏は30日になって発言を撤回した際にも「ナチスは民主主義のルールにのっとって選ばれた政権だ」などとのべています。麻生氏は当時のナチスが選挙結果だけでは議席が足りず、国会から共産党議員などを締め出すために、国会議事堂放火事件をでっち上げたことにさえ目をつむるのか。麻生氏のナチスの「動機」発言は口先で取り消したり言い逃れたりしても許されない、根の深いものというほかありません。
政権全体の責任問われる
繰り返される麻生氏の暴言に対し、閣僚の任命権者である安倍首相がとがめだてせず、菅義偉官房長官も「副総理が説明する」(30日)と全く問題にしようとする姿勢がありません。もともと日本の侵略戦争を肯定・美化してきた安倍政権の姿勢が、麻生氏の発言の背景にあるのは明らかです。
安倍首相は麻生氏を罷免し責任を明確にすべきです。さもなければ首相を含め安倍政権の姿勢が国内外で問われることになります。