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2017年8月24日(木)

主張

「水俣条約」発効

水銀被害のない世界への一歩

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 水銀汚染による健康被害や環境汚染を地球的規模で防ぐ目的の枠組み「水銀に関する水俣条約」が先週発効しました。水銀は人体、特に胎児や新生児、小児の神経系に悪影響を及ぼし、日本で引き起こされた水俣病の悲惨な実態は世界でも知られています。水銀による被害は途上国を中心に世界各地で今も広がっており、各国は条約にもとづき実効性ある対策を実行することが求められています。

採掘から廃棄までを規制

 国連環境計画(UNEP)は2002年に水銀の人への影響や汚染実態について報告書を発表し、水銀が「広く存在し、世界中に残留・循環し続けている」「その毒性は極めて強い」「途上国では依然利用され、リスクが高い」として国際的に規制する条約のために政府間交渉を始めました。

 「水俣条約」は13年に熊本市で開かれた国連の会議で採択されました。一定以上の水銀を含む蛍光灯や体温計などの製造や輸出入を20年までに原則禁止するなど水銀の採掘や貿易、排出、廃棄までを規制し、途上国への資金・技術支援も定めています。日本や米国、中国など74カ国・地域が締結し、発効要件を満たしました。

 規制が強められつつあるものの、今も世界で約4000トンの水銀が利用されています。小規模金採掘(ASGM)や塩化ビニルなどの製造工程、歯科用アマルガム、電池、体温計や血圧計などです。水銀は揮発性が高く、大気への排出が問題になっています。最大の大気排出はアジアやアフリカ、南米などでのASGMです。金鉱石に水銀を加え、金と水銀の合金をつくり、加熱して水銀を蒸発させて金を抽出する手法で人々が高濃度の水銀にさらされています。次に多いのは化石燃料の燃焼、主に石炭火力発電所です。

 日本は1970年代まで工業用途で大量の水銀を消費し、消費量は一時期、世界の生産量の4分の1を占めていました。過去の使用は地球環境汚染につながっており、水銀管理に積極的な役割を果たすことが不可欠です。

 現在、代替技術・製品によって水銀の国内需要は大幅に減ったものの、国内で回収した水銀を世界に輸出しています。輸出した水銀が転売されASGMに使われる懸念もあり、欧州や米国と同様、全面輸出禁止に踏み切ることが必要です。水銀の大排出源である石炭火発を推進することも水銀規制の流れに反しています。

 日本は国内法で使用済み蛍光管や水銀体温計・血圧計などの回収を市町村の責務としました。先進的に回収する自治体がある一方、焼却や埋め立ても少なくありません。市町村任せにせず、国の財政支援やメーカー責任も明確にした回収システムの確立が大切です。

水俣病の全面解決急げ

 条約の名称に「水俣」を提案したのは日本政府です。水俣病は公式確認から61年たった今も多くの被害者が補償、救済を求めています。13年を皮切りに国・県、加害企業などを相手に「ノーモア・ミナマタ第2次訴訟」が全国で提訴されました。症状や居住地、年齢で線引きせず、熊本・鹿児島両県の不知火海、新潟県阿賀野川沿岸の全住民の健康調査を行い、すべての被害者の救済が必要です。国は、新指針や認定基準を見直すべきです。


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