2017年8月20日(日)
徴用工像 建立相次ぐ
韓国大統領 姿勢を転換
日本の植民地下で強制動員された朝鮮人労働者を象徴する像(徴用工像)の建立が、韓国内で相次いでいます。徴用工を題材にした映画がヒットし、「解決済み」としていた韓国政府の立場を大統領が転換する発言をするなど、いまこの問題が新たな焦点になりつつあります。
現地からの報道によると、二大労働組合を中心に構成する市民団体は12日、ソウル市内の竜山駅前に徴用工像を設置しました。歴史を記憶し、悲劇を繰り返さないとの思いが込められています。この場所は、戦時中、朝鮮人労働者の集結地で、北海道の炭鉱や名古屋や広島などの軍事工場をはじめサハリン、千島列島などに連行されたといいます。
12日の除幕式には被害者の一人、金漢洙(キム ハンス)さんが参加。金さんは長崎の三菱重工の工場で働き、1945年8月9日の原爆で被爆しました。「日本は若者を連れて行ったのに一言の謝罪もない。韓国政府もその責任を問わなかった。情けない」と日韓両政府を批判しました。
日本は31年の満州事変以降、植民地だった朝鮮半島の人々を軍人・軍属、労務者、「慰安婦」などとして、戦争に駆り出しました。現在、韓国政府が強制動員被害者として認定している被害者数は約22万人です。
日本政府は、この問題は日韓両政府が65年に結んだ請求権協定で、「解決済み」との立場です。他方、韓国政府も、盧武鉉(ノ ム ヒョン)政権時代の2005年に徴用工問題は請求権協定に含まれているとの政府見解を発表。当時、盧氏の側近だった文在寅(ムン ジェイン)現大統領も加わっていました。
しかし強制動員の被害者からは、三菱重工や新日鉄などの日本企業に対して、賠償を求める裁判が相次いでいるのが現状です。12年5月には元労働者らが日本企業を相手に賠償を求めた裁判で、韓国の最高裁が、強制徴用は反人道的不法行為であり、「請求権協定の対象には含まれていない。個人の請求権は消滅していない」とする判決を出しました。
文氏は17日、就任100日に合わせて行った記者会見で徴用工問題を問われ、最高裁判決に言及。「両国の合意があったとしても個人の権利を侵害することはできない」「政府は最高裁判決の立場で問題に取り組んでいく」と語り、日本企業に賠償を求める被害者側の動きを否定しませんでした。
この発言を受けて日本の外務省は17、18の両日、在ソウル大使館ルートを通じて抗議しました。(栗原千鶴)