2017年8月13日(日)
極右の難民阻止船 立ち往生
漁民・労組が抗議行動
チュニジア沖
【ベルリン=伊藤寿庸】地中海を渡る難民から「欧州を守れ」をスローガンに、NGOによる救援活動の阻止を叫ぶ欧州の極右団体のチャーター船が、チュニジア沖で立ち往生しています。「人種差別主義者の船への燃料や食料補給は許さない」と立ち上がった同国の漁民、労組、市民団体の抗議行動のためです。
この船は、欧州各国で広がる新手の極右団体「アイデンティティー運動」の「Cスター」。「人身売買を阻止せよ」などの横断幕を掲げ、地中海各地を航海中です。ドイツ、オーストリアやフランスの活動家と、スリランカ人の船乗りが乗り込んでいます。
船のチャーター資金は、米国の極右メディア「ブライトバート」の関係者のサイトを利用して集めました。しかしネット決済大手のペイパルは、批判を受けて同団体の口座を凍結。船は調達できたものの、乗員の給与、食料、燃料などの資金が不足していたと伝えられています。
チュニジアでは、最初にザルジスの漁民団体が、人種差別主義者の船の寄港反対で立ち上がりました。その後同港の港湾当局も、同船への燃料補給はさせないと表明。チュニジア労働総同盟(UGTT)や市民団体、船員、港湾労働者などが、全国で寄港反対の運動を広げています。
もともと公海上で遭難している船に遭遇した場合、船長に救援義務があります。そのため、もし極右の船が、欧州への渡航阻止を目的に、難民船を北アフリカ諸国の領海に押し戻すようなことをすれば、違法行為となります。
一方、北キプロス(トルコが実効支配)に寄港したとき、「船員見習い」だというスリランカ乗組員20人のうち5人が現地で難民申請を行うという事態も。彼らは乗船にあたって多額の金を支払っており、この船が実は「難民密航」を手助けしていたのではないかとの疑いも出ています。
「成果」もないまま、立ち往生していた「Cスター」ですが、11日になって、エンジンの故障で航行不能となっていることが判明しました。