2017年7月19日(水)
主張
子どもの貧困対策
現状は深刻、打開へ力を注げ
日本の子どもの貧困をめぐる状況は依然深刻です。厚生労働省が6月末公表した国民生活基礎調査で子どもの貧困率(2015年)は13・9%へ低下したものの、約7人に1人の子どもが「貧困ライン」を下回ったままです。一人親世帯の貧困率は50・8%と主要国では最悪の水準です。家庭の経済的困窮が子どもの現在と未来を閉ざしている現状に対し、安倍晋三政権の対策は極めて不十分です。しかも貧困と格差をさらに広げる経済政策「アベノミクス」を推進しようとしています。抜本的な解決へ向け、政治の姿勢を変えることが必要となっています。
国際的に立ち遅れのまま
厚労省が3年ぶりに公表した日本の貧困についての数値は、国民生活の厳しい現実を改めて裏付けています。貧困を示す国際的な指標である「相対的貧困率」は下がったとはいえ、17歳以下の子どもでは13・9%(前回16・3%)、全体では15・6%(前回16・1%)という結果となりました。
相対的貧困率は、世帯の可処分所得などをもとに、その国で生活できる、ぎりぎりの「貧困ライン」(今回は年間122万円)を算出し、それ未満の所得しかない人がどれくらいの割合でいるかを示す指標です。経済協力開発機構(OECD)が14年にまとめた36カ国の子どもの貧困率は13・3%でした。日本の水準はそこにもなかなか到達できません。子どもの貧困をはじめ格差と貧困を解決することが、日本の政治と社会の優先課題の一つであることは明らかです。
とりわけ母子家庭など一人親世帯の状況は過酷です。貧困率は50・8%(前回54・6%)で、なおも高水準であることは変わりません。調査では、母子世帯の82・7%が「生活が苦しい」と答えています。「貯蓄がない」と回答した母子世帯は37・6%にのぼり全世帯平均14・9%の2倍以上となっています。子どものいる世帯への経済支援をいっそう強める必要があることを浮き彫りにしています。
貧困問題はどの世代にとっても深刻ですが、発達・成長過程にある子ども時代の貧困は、健康や学力など子どもに必要な条件が経済的困窮によって奪われるという点など影響は大きく、子ども本人の人生だけでなく、社会全体にも損失をもたらします。
研究者や市民団体の粘り強い取り組みなどを通じ、子どもの貧困対策法が成立し、地方自治体などで実態調査など改善への動きが始まっているものの、安倍政権は貧困問題に真剣に向き合おうとせず、対策の立ち遅れが際立っています。世論と運動の広がりの中で、安倍政権は、一人親世帯への児童扶養手当の一部増額や、給付型奨学金の部分的導入を行いましたが、あまりにも規模が小さく、事態の本格的な打開の道筋はみえません。
社会保障切り捨てでなく
安倍政権の「アベノミクス」は、大企業には空前のもうけを保障する一方、賃上げにはつながらず、国民の暮らしは苦しいままです。生活保護、医療・介護、年金などの社会保障の予算は容赦なくカットする政策を続けています。国民が支えを求めている時に、その願いにこたえようとしない安倍政権の姿勢はあまりに異常です。税の集め方・使い方の改革、働き方の改革をはじめ暮らし優先の政治への転換が急がれます。