2017年6月28日(水)
自衛隊明記で9条2項空文化
自民・石破氏が指摘
「読売」インタビュー
自民党の石破茂元防衛相が27日付「読売」のインタビューで、安倍晋三首相が主唱する9条改憲案―憲法9条1項、2項を残して自衛隊を明文で書き込む―について、「どう書こうと、9条2項の『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』とは矛盾し、むしろ2項を空文化させる」と指摘しています。
石破氏は「近代戦遂行能力を備えた自衛隊が『戦力』に至らないと言われても、普通の人はまず理解できない。国際社会から見れば軍隊だ。首相の案は、国民が『おかしいよね』と思っていることを憲法で固定する」とし、「そうではない書き方があるなら教えてほしい」と述べています。
石破氏は、軍事に詳しい自民党きっての安保族で、自民党改憲案の9条2項削除・国防軍保持を主張してきました。
解説
無制限な武力行使に道 認める
石破茂元防衛相の主張は、自衛隊は実態としては“戦力”であり、「軍隊」だから、9条2項を残して自衛隊を憲法に書き込めば、「戦力不保持」規定と「戦力」規定が併存することになり、結果的に2項が空文化するというものです。自衛隊が「戦力」にあたり違憲とする立場から、自衛隊を憲法に明記すれば2項の戦力不保持規定を空文化させるという主張に近いものです。戦力である自衛隊を憲法に書き込むことで、2項による制約はなくなって、無制限の海外での武力行使に道を開く可能性を認めるものと言えます。
ただ、2項の戦力不保持規定が残れば、国民には分かりにくく、さまざまな疑問を残すことを「心配」しているのです。
他方、自衛隊「合憲」論からはどうなるでしょうか。自衛隊は軍事力ではあるが、「海外派兵禁止」「専守防衛」などの制約を受け、国際標準の軍隊ではなく「戦力」に当たらないとされてきました。
安倍首相は自衛隊を憲法に明記しても、2項は残り、従来の解釈は変わらないとします。しかし、自衛隊が憲法に明記され、憲法上の存在に格上げされれば、合憲性担保のための制約は不要になります。
自衛隊の活動への制約は、憲法の下にあったからこそ認められてきたものです。自衛隊が憲法上の存在に格上げされ、2項と並び立つ状態になれば、解釈は全面的に再編成され、無制限の武力行使に道を開くのです。
(中祖寅一)