2017年6月21日(水)
主張
少子化・出生数減
現状打開へ役割果たす政治を
2016年の日本の出生数は100万人を割り込み、合計特殊出生率(女性1人が一生に産む子ども数の推計)も1・44へ微減したことが今月初め公表され、議論を呼んでいます。出産や子育てを望んでも二の足を踏んだり、あきらめたりせざるを得ない社会の現状が打開できないことは大問題です。安倍晋三政権は「1億総活躍」とか「人づくり革命」などかけ声ばかりで真剣に向き合う姿勢がありません。子どもを産み育てることができる安心の仕組みを整えるため、国でも地方でも役割を果たす政治への転換が急がれます。
子を持ちたいと願っても
厚生労働省の人口動態統計(2日公表)は、子育てが困難な日本の深刻な姿を浮き彫りにしました。合計特殊出生率は15年比で0・01ポイント減少と低迷から抜け出せません。国の人口維持の目安とされる2・07に遠く及ばずフランス(1・92)、スウェーデン(1・85)と比べても差は開いたままです。
出生数は15年比で2万8千人以上減り97万6979人でした。年間出生数が100万人に届かないのは、人口動態統計を始めた1899年(明治32年)以来です。出生率を都道府県でみると東京が1・24と最低でした。都市部などではいっそう切実な課題です。
内閣府が実施した国際比較調査(15年)では、希望する子どもの数は日本もフランス、スウェーデンなども2人程度と大きな違いはありません。むしろ未婚者で見ると日本は87%が子どもを欲しいと回答し、フランスの約65%を上回ります。ところが「希望する子どもの数まで子どもを増やしたい」と答えたのは、スウェーデンやフランスが60%を超えているのに、日本は約46%にとどまります。
同調査では、日本では「子どもを増やさない・増やせない」理由のトップに「子育てや教育にお金がかかりすぎる」(50%)が挙げられ、他国と比べ突出しています。「働きながら子育てができる職場環境がない」「保育サービスが整っていない」との回答が日本では多いことも他国にない特徴です。この現状に根本からメスを入れることなしに、安心の子育て社会実現が困難なのは明らかです。
安倍政権は一昨年、「1億総活躍社会」を打ち出し「希望出生率1・8」を掲げましたが、実態は、格差と貧困を拡大した経済政策「アベノミクス」の焼き直しです。解決が急がれる深刻な保育所待機児問題でも、安倍政権は17年度末「ゼロ」実現の目標を放棄、3年後に先送りしました。しかも認可保育所拡充や保育士の大幅処遇改善などに背を向けています。子どもの安全にかかわる「規制緩和」「詰め込み」が中心で、3年後に解消できる道筋は見えません。
「働き方改革」も、異常な長時間労働にお墨付きを与え、非正規の賃金格差を固定化する大改悪であり、安心の子育て社会の願いに真っ向から逆らうものです。
目先の「対策」ではなく
国会閉幕後の記者会見で安倍首相は、人口減対策を念頭に「人づくり革命」を強調しましたが、「共謀罪」法強行、「加計」「森友」疑惑、「アベノミクス」破綻で高まる国民の批判をかわす狙いが透けて見えます。無責任な姿勢です。
安心の子育て社会を実現するために、国でも地方でも政治を動かす声を上げることが重要です。