2017年5月20日(土)
金田法相に対する不信任案
畑野議員の賛成討論
衆院本会議
日本共産党の畑野君枝議員が18日の衆院本会議で行った、金田勝年法相に対する不信任決議案への賛成討論(要旨)は次の通りです。
賛成理由の第1は、金田法相が「共謀罪」法案について、憲法63条に基づく大臣としての答弁義務を果たさず、国民への説明責任に背を向けてきたことです。
安倍晋三首相は今国会冒頭、「テロ等準備罪であって共謀罪とは全く異なる」「一般人が対象となることはありえない」と断言しました。過去3度廃案になった法案とどう違うのか、国民の疑問と不安に答えるのは法務大臣の責任です。
ところが金田法相は、「成案を得た後に法務委員会で議論すべきだ」として、法案準備段階での答弁を事実上拒否。成案を得た後は、なぜ一般人が対象にならないのかという基本問題にさえまともに答弁できませんでした。
しかも、与党と鈴木淳司衆院法務委員長は、同委員会への法務省刑事局長の常時出席を一方的に議決しました。衆院規則に反する前代未聞の行為は、金田法相の答弁能力の欠如を与党自らが認めたものです。
第2は、金田法相の下で提出された本法案が憲法違反だからです。共謀罪は計画(話し合い、相談)を処罰対象とします。現実に具体的な危険性のある行為を罰する近代刑事法の原則を根底から覆し、日本国憲法が保障する思想・良心、表現の自由、適正手続きなどを侵害する違憲立法です。
本法案の骨格は崩れています。金田法相と政府は、準備行為があって初めて処罰するとして、内心を処罰するものではないと答弁してきました。準備行為には、予備罪のような客観的な危険性は要求されておらず、日常の行為と区別できません。金田法相の「花見であればビールや弁当、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳を持っているといった外形的な事情がありうる」という荒唐無稽の答弁と「計画に基づく行為かどうかを判断する」との取り繕いは重大です。
両者は外形だけでは判断できないため、捜査機関が実行準備行為のはるか前から、計画、すなわち広範な人々のコミュニケーションを調査し、つかんでおくことを認めたものだからです。「内心を処罰しない」との前提はもはや崩れています。
「一般人は対象にならない」という答弁も重大です。金田法相が「一般人とは組織的犯罪集団に関わりのない人たちだ」と言い張る一方、林真琴法務省刑事局長は、「計画がなされた時点において組織的犯罪集団かどうかを判断する」と正直に答えています。
計画をつかむ口実で国民を広く監視し、「一般人」かどうかは政府が仕分けすると言うに等しい答弁です。「一般人は対象にならない」というごまかしは、国民を愚弄(ぐろう)するものです。
政府は、テロ対策だともいいます。国際組織犯罪防止条約の対象は、マフィア等による国際的な経済犯罪です。日本政府は、条約制定過程で「テロは対象とすべきでない」と主張していました。これを知りながら「テロ等準備罪」とけん伝してきた金田法相と政府の責任は極めて重大です。
第3は、国民の不安や懸念を無視し、金田法相が与党と一体で法案を強行成立させようとしていることです。
世論調査で、今国会で成立させるべきでないという慎重意見が6割を超えています。反対の声は全国各地で急速に広がっています。日弁連はじめ法律家7団体、162人の刑事法研究者、日本ペンクラブなどが声明を発表し、署名は60万人分を超えています。
安倍政権は、秘密保護法、拡大盗聴法、安保法制=戦争法を強行し、安倍首相は「9条改憲」発言まで行いました。物言えぬ監視社会をつくり出す「共謀罪」法案は、一連の動きと一体で日本を戦争する国へ変質させるものです。違憲の法案を強行採決することは絶対に許されません。廃案を強く求めます。