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2017年5月16日(火)

教育無償化 改憲せずとも可能

必要なのは政治判断

逆行してきた自民政権

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 安倍晋三首相は、高等教育(大学)の無償化を改憲テーマの一つとしました。しかし、教育無償化は憲法を変えなくてもできることです。無償化に背を向けてきた自民党政治を棚に上げて、“改憲が必要”と装うとは、ご都合主義の極みです。(和田肇)


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(写真)「学費を下げろ」「誰もが利用できる給付型奨学金を」と声を上げる若者たち=2016年12月、財務省前

 もともと教育無償化を改憲項目に掲げたのは日本維新の会でした。教育を受ける権利を定めた憲法26条2項(別項(1))にある「義務教育は、これを無償とする」という文言を、“高等教育に至るまで無償にする”と書き換えるのが、維新の改憲提案です。

 しかし、憲法を変えなければ無償化ができないわけではありません。26条1項は、大学教育を含む教育全体を国民の権利として定めています。これに基づく教育基本法第4条は経済的地位などで差別されないとしています。無償化は、政治の判断で可能です。

 実際、日本政府は2012年に高校や大学の段階的な無償化を求める国際人権A規約(13条2項b、c=別項(2))を承認しました。1979年に同条約を批准した際に、教育無償化を規定した部分については留保していましたが、民主党政権時に留保を撤回しました。これに先立つ2010年には、高校授業料の無償化にも踏み切っています。

 “憲法を変えずとも、教育の無償化は可能だ”と政府自身が理解しているのです。

高学費の原因は

 教育無償化に背を向け続けてきたのは歴代の自民党政権です。民主党政権が始めた高校授業料無償化に対しては「過度の平等主義・均一主義」「選挙目当てのばらまき」だと攻撃しました。無償化どころか第2次安倍政権が発足すると、14年に所得制限を導入して制度を後退させました。

 大学の異常な高学費も自民党政権の下でもたらされました。授業料高騰が始まったのは、1971年の中教審答申で授業料は「受益者負担」だと打ち出されてからです。

 国立大は、75年に年間3万6千円でした。これが、2015年は53万5千円にもなります。私立大(平均)は75年18万3千円から、14年86万4千円に達しています。

 日本学生支援機構の奨学金は有利子・貸与型を中心とした“学生ローン”に変えられました。教員になった場合の返済免除措置も無くし、卒業と同時に数百万円の借金を背負う若者が増えて社会問題になりました。

文教予算増やせ

 自民党政権は、学費値下げを求める学生や保護者の声に、予算がないとゼロ回答を続けてきました。国の文教予算は安倍政権で右肩下がりです。民主党政権末期(11年度)の4・17兆円が、17年度には4・05兆円となり、約1200億円も削られました。

 無償化に逆行する状況に対し、日本共産党は▽高すぎる学費を10年間で半額にする▽月額3万円の給付奨学金を70万人に支給する―という抜本改革を提案しています。

 国立大の運営費交付金を毎年160億円程度ずつ増やせば、学費を毎年2・6万円程度値下げできます。私学助成も毎年900億円程度引き上げていきます。予算規模は国公私立全体で毎年1100億円程度引き上げることになります。

 本気で授業料無償化を考えるなら、受益者負担論を撤回し、文教予算を増やすことが求められています。変えるべきは憲法ではなく、自民党政治です。

別項(1)【憲法26条】

 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

 (2)すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

別項(2)【国際人権A規約13条2項】

 b 種々の形態の中等教育は、すべての適切な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。

 c 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。


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