2017年5月9日(火)
フランス大統領選 勝利のマクロン氏
閉塞感打破に期待
労働規制の緩和に不安も
【パリ=島崎桂】フランス大統領選挙を制したマクロン前経済相は、既存政党に属さない「新味」と、39歳の若さを期待に変え、幅広い年代の有権者を引きつけました。一方で、マクロン氏が掲げる労働時間の柔軟化や解雇規制の緩和に対する懸念も根強くあります。新政権には、こうした国民の不安を払しょくし、評価を一新する実績が求められそうです。
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7日夜、パリのルーブル美術館前の広場には多くのマクロン氏支持者が集まり、同氏の勝利を祝いました。
IT企業で働くビクトール・ガニェさん(25)は、「古い価値観や他党との政争に縛られた既存政党には期待できない。マクロン氏が提案するのは、これまで誰も挑戦したことのない大きな変化だ。成功するかはわからないが、今の閉塞(へいそく)感を打ち破ってほしい」と期待を寄せました。
今回の選挙が初の投票となった18歳の青年3人も、「ルペン氏を退けたことで、青年失業率やテロ対策などの問題に欧州が一体となって取り組める」と笑顔をみせました。
ただ、マクロン氏が掲げる企業支援を軸とした雇用創出や労働規制の緩和に対し、投票を終えた多くの有権者が「オランド(仏大統領)政治の継続」と批判。歴代仏大統領で最も不人気な「オランド政権からの断絶」が焦点となった今回の選挙で、最もオランド氏の政策に近いマクロン氏が当選を決めたことは、多くの有権者にとって皮肉な結果となりました。
特に、「極右阻止」の一点でマクロン氏に投票した人々は、「超自由主義社会」や「過酷な競争社会」の到来を指摘。こうした懸念は、保護主義や労働者保護を訴えたルペン氏支持者の一部にも共通しています。
匿名を条件にルペン氏への投票理由を語った男性(30)は、「これ以上の雇用不安定化には耐えられない。フランス人の労働者として、ルペン氏に投票するしかなかった」と苦しい胸の内をのぞかせました。
ルーブル美術館前で勝利演説したマクロン氏は、ルペン氏に投票した有権者の「怒りや困惑」に理解を示し、「極端な政党に投票する理由がなくなるよう今後5年間で全力を尽くす」と訴えました。
マクロン氏はオランド氏の任期が切れる14日までに就任式を行う予定。その後、首相指名などをへて新政権が発足します。6月には仏下院選が控えており、マクロン氏が率いる政治団体「アン・マルシュ(前進)」がどれだけ議席を得られるか注目されます。