2017年5月1日(月)
首相夫人付の政府職員
私的活動を支援か
取材や選挙応援…“公私混同”に批判
政府は安倍晋三首相夫人の昭恵氏に、5人の政府職員を秘書官役でつけています。首相の公務遂行を助ける夫人を「支援する」(閣議決定)という理由です。実際には、夫人の「私的」ともいえる活動を支援し、「政権による公私混同」と批判されています。その実態は―。(三浦誠)
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安倍昭恵氏は1月5日に、ノンフィクション作家の石井妙子さんの取材を受けました。石井さんによると、取材や原稿の確認などを手配したのは、夫人付のA職員です。取材場所は、首相公邸の一室。その時の様子を石井さんは『文芸春秋』(3月号)で、「部屋の隅には女性の秘書が控えて、会話をメモする」と記しています。
約1時間がたつころに、A職員は取材を終わるよう促しました。終了時には、ごく自然にA職員が昭恵氏と石井さんを並べ“記念撮影”をしました。そしてA職員は「おみやげです」と、昭恵氏のイラスト入りメモやペンを持ってきました。
別の雑誌の編集者は、昭恵氏にインタビューした際、夫人付のB職員と原稿などのやりとりをしました。
B職員は、学校法人「森友学園」(大阪市)の依頼で、国有地の取引について財務省に問い合わせ、学園側に回答した政府職員です。
政府は答弁書で、夫人による公務補助は、「国の機関の依頼又は要求に応じ、行われている」と定義しています。首相の公務補助を理由に、常駐の政府職員を置いたのは第2次安倍内閣が初めてです。
昭恵氏が与党候補の選挙応援に行く際にも、夫人付職員は同行しています。その数は十数回にのぼります。森友学園の幼稚園で昭恵氏が講演したときも職員が付き添っています。
選挙応援や講演は、昭恵氏の私的な活動です。政府は「夫人が私的な活動を行っている場合にも、当面の公務補助活動に必要な連絡調整をする」ために同行していると説明しています。「あくまでも夫人の私的な活動そのものをサポートするものではない」(国会答弁)という姿勢です。
取材をうけることは、国の依頼による「総理公務補助」なのか―。夫人付職員が所属する内閣官房総務官室に質問しましたが、回答はありませんでした。
石井さんは言います。
「昭恵さんが取材をうけてくれたことには感謝しています。ただ取材場所に公邸を指定されたこと自体が驚きでした。公務を手伝うために秘書がいるなら仕事の内容は、吟味が必要です。私的な活動には私費で秘書を雇うべきだと思います」