2017年4月15日(土)
辺野古緊迫 護岸工事来週にも
県民抵抗 県・市に権限
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で、防衛省沖縄防衛局は来週にも護岸工事に着手しようと、県民の反対運動を力ずくで排除し、急ピッチで作業を進めています。ただ、土砂の投入など本格的な埋め立ては、県民の粘り強い抵抗に加え、工事を食い止める沖縄県や名護市の権限があり、このまま進む見通しは立っていません。(柳沢哲哉)
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13日午前、米軍キャンプ・シュワブが置かれる辺野古崎の北側。通称「レジャービーチ」と呼ばれる砂浜では、早朝から作業員十数人が石を敷き詰め、クレーンで運んだ鉄板を並べているのが確認されました。護岸工事のために海に入れる砕石などを運ぶ車両が通行する工事用道路の整備とみられます。
シュワブの工事用ゲートでは、沖縄県警機動隊が連日、工事に反対して座り込みをする市民らを強制排除。道路設置に必要な栗石を載せたダンプは3月から先週までで計438台、護岸工事に使用するとみられる砕石を載せたダンプは2月から先週までで142台に上ります。今週に入ってからも1日に入る台数が10台ほど増えるなど、作業が加速しています。
真っ先に着手されるのは、埋め立て区域のいちばん北側にある「K9護岸」とみられます。そのため、防衛局は資材置き場から海までをつなぐ道路の設置を急いでいるのです。
強引作業で矛盾
防衛局の強引な作業は多くの矛盾を抱えています。
違法、欠陥
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土木工事に詳しい沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは、砂浜での鉄板を敷いた道路整備について、「埋め立て承認願書にも記載がされておらず、仲井真弘多前知事が承認した工法変更申請にも入っていません。この道路工事は完全に違法です」と強調します。
県も鉄板の敷設を疑問視し、13日に防衛局に対して設置目的や構造、環境保全対策などの報告を求める文書を送付しました。
埋め立て区域周辺に設置されている汚濁防止膜も欠陥だらけです。北上田さんは「工事現場を囲わず、開いている部分が大きいため、汚濁の拡散防止にまったく効果がなく、海に致命的な影響を与えることが目に見えています」と指摘。汚濁防止膜を固定するコンクリートブロックを当初の最大57トンから15トン未満に変更したことから、台風などで海が荒れた場合に耐えられない可能性もあるといいます。
埋め立ては困難
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仮に護岸工事を強行したとしても、本格的な埋め立て工事に入るのは困難です。
海底面を変更させる岩礁破砕の許可は3月31日で期限が切れています。護岸工事が岩礁破砕行為にあたることは明らかであり、翁長雄志知事は工事差し止め訴訟を検討する考えを示しています。
さらに、最初に着手するとみられるK9護岸に接する「埋め立て区域1(1)」の土砂は辺野古ダム周辺から摂取しますが、新基地建設に反対する名護市が管理する区域のため、土砂の運搬ルートが確保されていません。
また、同区域にそそぐ美謝川の水路を変更する必要があります。防衛局は当初、名護市との協議が不要な方法に変更しようとしました。しかし、新基地推進の仲井真前県政の下でも承認を得られる見通しがないため、自ら変更申請を取り下げてしまいました。
区域では名護市と県の教育委員会による埋蔵文化財調査も行われており、工事に影響が出ます。
稲嶺進名護市長は13日の記者会見でこの点にふれ、「これらをクリアしないと実質的な埋め立ての工事に入ることはできない。飛行場にはならないということだ」と強調しました。護岸工事の着手についても「国民向けに、あきらめさせる、仕方がないと思わせることを狙った行動だ」と指摘しました。
ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は、「県民をあきらめさせようとして、設計計画に基づかずにできるところからやろうとしているから矛盾を起こしている。ここであきらめたら政府の思うつぼ。絶対にあきらめないことが基本方針です」と力を込めます。