2017年4月14日(金)
仏大統領選 平和問題が争点に
「軍事同盟離脱」「紛争の外交解決」
メランション氏の政策に注目
【パリ=島崎桂】今月23日に第1回投票が迫ったフランス大統領選挙で、平和問題が大きな争点に浮上しています。シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑を受けた米軍のシリア攻撃が主な要因。仏共産党などが支援するメランション候補は自らを「平和の候補者」と押し出し、あらゆる軍事同盟からの離脱と外交活動を通じた紛争解決を訴えています。
メランション氏は9日、仏南部マルセイユで集会を開催。およそ7万人の聴衆を前にした1時間の演説の大部分を平和問題に費やしました。
米の攻撃を非難
難民問題では全ての難民への全面的な支援を主張。「(難民を生む)根本問題にも取り組む必要がある」として、発展途上国に不利な貿易協定の見直しや、こうした国ぐにでの労働者や資源の搾取停止を求めました。
シリア問題では、「化学兵器の使用者は誰であれ犯罪者だ」とした上で、米軍のシリア攻撃は「国連の承認もない無責任な行動であり、地域の緊張を高めるだけだ」と非難。「戦争ではなく対話と交渉、外交にこそ力を注ぐべきだ」との訴えに、聴衆は盛大な拍手を送りました。
今回の演説は、多くの仏メディアが取り上げ、平和団体からも称賛の声が上がりました。
広島市が会長を務める平和首長会議・フランス支部のミシェル・シボ事務局長はメランション氏について、「平和を構築する建設的な外交姿勢を示す唯一の候補者だ」と評価。同氏が訴える核兵器禁止条約の交渉推進や非核地帯の拡大に賛意を示し、「軍事的緊張と競争ではなく、協力と交渉を重視している。こうした立場はテロ対策にも有効だ」と語りました。
他党「非現実的」
他の候補者らはメランション氏の政策を「非現実的」だとして攻撃を強めています。
新自由主義的政策を掲げ、与党・社会党を離脱したマクロン候補は、「テロとのたたかいにおける非武装宣言」だと非難。最大野党・共和党のフィヨン候補は米軍のシリア攻撃に理解を示しました。
自身の立候補を取り下げ、社会党のアモン候補支持を決めた環境政党「欧州エコロジー・緑の党(EELV)」のジャド氏も、「メランション氏は反米しか口にせず、ロシアの領土拡張主義を認めている」と述べました。
世論調査では、移民排斥と欧州連合(EU)離脱を掲げる極右・国民戦線(FN)のルペン候補とマクロン氏が依然として支持率25%前後で首位を争っています。ただ、メランション氏の支持は討論会や政治集会のたびに増加しており、一部調査ではフィヨン氏(支持率18%前後)を抑えて第3位に躍進。一部メディアではメランション氏の決選投票(5月7日)進出の可能性も取り沙汰されています。