2017年4月8日(土)
主張
「共謀罪」審議入り
「壁に耳あり社会」再来阻もう
安倍晋三政権が後半国会の重要法案と位置付ける「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改定案)が衆院で審議入りしました。「共謀罪」は過去3度国会に提出されたものの、「内心」を取り締まり、思想・信条の自由を侵す重大な危険性があることから、国民の批判によって、廃案に追い込まれた経過があります。そんな「共謀罪」法案をまたもや持ち出し、何が何でも今国会で成立させようという安倍政権の姿勢は極めて異常です。4度廃案に追い込むため、国会内外のたたかいを広げることが急務です。
「心の中に手を突っ込む」
「共謀罪」法案は、犯罪が実際起きていない段階でも2人以上で「計画」し、「準備行為」をしたと捜査機関がみなせば、取り締まり、処罰の対象にするというものです。これは近代刑法体系とは異質の発想です。近代刑法では、犯罪によって具体的な被害が生じた場合に初めて処罰するということが原則で、「心の中で思った」だけでは処罰対象にできないからです。
その大原則を覆す法案は、「人の心の中に手を突っ込み、憲法で絶対的に保障されている『内心の自由』を侵害する」(日本ペンクラブの声明)ものに他なりません。日本弁護士連合会や160人を超す幅広い刑法研究者などは「日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまう」などと強い危機感を示して反対を表明しています。
まだ発生していない“犯罪”を「話し合い、相談」の段階で取り締まるとなると、捜査のあり方は従来と大きく変わります。“犯罪”が話し合われていないのか、捜査機関が日常的に国民の言動に目を光らせることになってきます。
安倍首相らは、「一般の人たちが対象になることはない」と繰り返しますが、法案には、そんな歯止めはありません。どんな団体・組織を対象にするかの判断は捜査機関です。警察などから「怪しい」と決めつけられた団体、それに所属する個人は電話盗聴や尾行などの対象にされる危険があります。
国民の「話し合い」を監視し、取り締まるための捜査権限の拡大もすすんでいます。昨年の国会では、盗聴捜査を可能にした通信傍受法の改悪が強行され、それまで「薬物犯罪」や「銃器犯罪」など4類型に限られていた盗聴対象の犯罪が、「窃盗・強盗」などへ広げられました。「室内盗聴」も可能にする法改定も検討しています。金田勝年法相は、「共謀罪」捜査で通信傍受法を使うことを否定していません。メールやラインのやりとりも監視されるおそれが国会審議で明らかになっています。憲法21条が保障する「通信の秘密」にたいする重大な侵害です。「共謀罪」法案には、“密告を奨励”する条文もあり、えん罪を続発させる危険が指摘されています。
「壁に耳あり、障子に目あり」―。治安維持法などで思想・信条・言論にたいする取り締まりと弾圧が繰り返された戦前社会を再来させることは絶対に許されません。
口実はことごとく破綻
「東京五輪のためのテロ対策」とか、「国際組織犯罪防止条約批准のため」などという安倍政権が持ち出した「共謀罪」新設の口実は、これまでの国会審議の中で矛盾と破綻が浮き彫りになっています。
「戦争する国」づくりと一体となった国民監視社会への道を阻止するため、力を合わせる時です。