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2017年4月3日(月)

2017とくほう・特報

“シンママ”応援します

つながって多彩に

大阪社保協が母子家庭支援

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 「つぼみがよかったです。これから咲くぞって感じで」。サクラのつぼみがほころび始めた大阪市北区の扇町公園。2日、シングルマザーと子どもたち約30人が集いました。大阪社会保障推進協議会「シンママ大阪応援団」のお花見会です。日本の子どもの貧困は6人に1人。なかでもひとり親家庭の子どもの貧困は2人に1人以上。同家庭の85%は母子家庭です。そんなシンママ世帯を支援しようと2年前立ち上がった「応援団」。多彩な活動をくり広げています。

 (内藤真己子)


役所が生保拒否/困り果てて…

 2月には募金で京都に一泊旅行へ。広間で会席料理をいただき、クイズ大会。子どもが眠るとママはおしゃべり会。翌日は動物園へ…。つながって、ゆったりとした時を過ごしました。

 「旅館の部屋でお茶を飲んでいたら、次男が『しあわせやなー、お母さん』って言ってきて。ほんまやなあって泣けてきた」。小学2年と1年生の息子とやってきた真美さん(45)=仮名=です。

 借金で自転車操業の飲食店を営む夫の暴力。それが子にまで及んだ時、離婚を決め実家に戻りました。両親は持病があり年金暮らし。自活を求められます。ところがパート収入は月3万〜4万円。独身時代の貯金は、夫の店の借金返済と生活費で底をついていました。

 役所へ生活保護の相談に行きましたが「まず実家を出て困ったら来て」の一点張り。申請させてくれません。困り果てた時、ネットで応援団のサイトにたどり着きました。メールを出すと、大阪社保協の寺内順子事務局長からすぐ返事がきました。「一度会って、お茶でも飲みながらお話ししませんか」

 事情を聞いた寺内さんは地域の「生活と健康を守る会」につなげます。真美さんは同会役員と再び自治体へ。4時間の交渉の末、生活保護の申請が受理され転居もできました。「見ず知らずの私にここまでしてくれる。ただ涙があふれて仕方なかった」と真美さん。

 寺内さんは語ります。「役所でたらい回しにされたうえ、生活保護を申請させない『水際作戦』で傷ついている女性が大勢いる」。相談のメールが来ると面談し、生活保護の申請が必要な場合は必ず同行します。「不幸な事件の背景には母子世帯の貧困と孤立がある。生活費保障と、つながりをつくることが大事です」。応援団はカンパによる月1回程度の食料支援や料理教室など交流企画をしています。

非正規・低賃金/子育て厳しく

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 「リョコウって何?」。優子さん(37)=仮名=の小学4年の長男には、応援団の京都行きが初めての「旅行」になりました。

 夜ごと繰り返される夫の暴力。離婚して、当時小学低学年の長女と保育園児の長男を連れ、実家のある関西に戻りました。

 職業訓練校で資格を取り、医療事務のパートで1日7時間働きますが時給は地域の最低賃金。手取りで月11万〜12万円にしかなりません。夜も週5日弁当店で働いて合計で月15万〜16万円。児童扶養手当は所得制限にかかり減額されました。生活費に借りたカードローンの返済もあり、月末は預金残高が100円以下に。「食事は子どもたち優先で、私はパスタに塩コショウかけて食べていました」と優子さん。

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 夜も働くため、保育園のお迎えなど長男の世話は小学生の長女に頼みました。長女はストレスをため問題行動に。長男も就学すると、けんかを繰り返し頻繁に学校から呼び出されます。「子どもと向き合うには仕事を減らすしかない」。市役所に相談に行きましたが「掛け持ちで仕事しても健康だ」と生活保護の申請は退けられました。支援団体の同行を得て生活保護を受給。仕事を減らすと長男も落ち着いてきました。

 「母子世帯が貧困に陥る要因の一つは女性の労働条件が悪すぎること」。同応援団メンバーで神戸親和女子大学講師の芦田麗子さんは指摘します。「正規雇用では労働時間が長くなりすぎ、非正規では賃金が低すぎて、どちらにしても子育てと両立しない」。実際、政府の調査でも母子世帯の8割が働いていますが半数以上が非正規雇用です(グラフ上)。就労収入は両親と子どもがいる世帯平均の3割にも届きません(グラフ下)。

高い教育費/苦境追い打ち

 高い教育費がシンママを苦しめています。ボブカットが似合う恵さん(43)=仮名=は、100円ショップの化粧品で身だしなみを整えています。今春、中学に進学する長女と小学4年の次女の3人家族。夫がネットで外国通貨を売買するFX取引にのめり込み、1500万円の損失を出し多重債務に。暴力行為が激しくなり離婚しました。

 貯金は夫の借金返済と自身のがんの治療費で使い果たします。ネットで同応援団のサイトを見つけ、申請に同行してもらって生活保護を受け暮らします。

 長女の中学入学では制服や体操着、通学バッグ、指定の靴などで10万円近くかかります。制服はモデルチェンジし、お古はもらえませんでした。ところが生活保護の入学に関する一時扶助は6・1万円。差額の4万円程度は食費を切り詰めて捻出するしかありません。1袋19円のモヤシ、半額割引で100グラム48円の鶏胸肉を使った炒め物が定番メニュー。1月の食費は7500円でした。

 勉強が好きな長女。大学進学を希望しています。しかし国は生活保護世帯の子が大学進学する場合、子は世帯分離して同給付を受けないことを条件にしています。「学ぶ権利は平等のはず。『貧困の連鎖を断つ』というなら、生活保護を受けながら大学に進学できるようにしてほしい」と訴えます。

 「憧れの振り袖を着れ、すごい感激です」。生活保護を受ける母親(48)と世帯分離し、私立大学に通う佳奈さん=仮名=は応援団の支援で二十歳の記念撮影に臨みました。

 月11・5万円の貸与型奨学金と、同4万円の企業による給付型奨学金を受け、年間約100万円の学費を払います。卒業時には550万円以上の借金。生活費が足りず、ホテルで重労働のバイトをして賄います。「将来は社会福祉の仕事がしたい」

 シンママの貧困解決に必要な課題は何か―。芦田さんは「最低賃金を時給1500円へ引き上げるなど雇用環境の改善が必要。教育に関するものは無償化し、児童扶養手当や児童手当の引き上げ、公営住宅の整備、生活保護世帯の大学進学を認めるなど社会保障制度の拡充も欠かせない。これらはすべての子育て世帯、単身女性の貧困解決にもつながる」と主張します。

 寺内さんは言います。「シングルマザーの貧困は働き方と社会保障の問題。大もとにメスを入れるには政権をかえる必要がある」


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