2017年3月12日(日)
韓国 政治転換示せるか
大統領選へ候補者本格活動
野党が大きくリード
【ソウル=栗原千鶴】韓国国会から弾劾訴追された朴槿恵(パク・クネ)大統選が憲法裁判所の決定で罷免されたことを受け、12月予定の大統領選挙が5月9日までに行われることになり、各候補が一斉に活動を本格化させました。広場や街頭で大統領弾劾の声を上げた国民が求める政治の転換に向けた展望を示せるのかが問われます。経済の低迷や日本、中国との外交、北朝鮮の核・ミサイルへの対応などの課題も山積する韓国のかじ取りを決める選挙となります。
韓国メディアが10日に行った世論調査によると、政党支持率は最大野党「共に民主党」が45%で他党を圧倒しています。野党第2党「国民の党」は11・5%。中道から中道左派が多い両党で過半数の支持を得ています。
保守派は、与党セヌリ党から改名した自由韓国党が6・9%、旧セヌリ党から離党した議員で構成する「正しい政党」が5・4%で厳しい状況です。
民間世論調査会社が判決直前に行った大統領候補の支持率は、「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前同党代表が32%で1位。同党の安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事が17%、「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)前同党共同代表が9%と続いています。
一方、保守派の大統領だった朴氏の罷免を70%以上の国民が支持した世論を反映し、保守派は候補者選びに苦慮しています。自由韓国党は候補を選出できない状況。「正しい政党」は今月中に討論会などを開催し、候補者を選ぶとしています。
保守派を結集できる候補として期待されている黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行(首相)は、各種世論調査で10%前後の支持率にとどまっており、黄氏自身も立候補を表明していません。
文氏は弾劾を「市民の偉大な勝利」と評価。憲法裁判所が客船「セウォル号」沈没事故で大統領の責任を認めなかったことを批判し、判決後すぐにセウォル号事故の遺族を訪問するなど、精力的に行動しています。
一方、支持率を伸ばしているのが安氏。「政権交代以上の新しい政治」を求めるとしています。これまでの進歩や保守という区別ではなく、「国民全体の利益を考える」と語ります。
イ・ソクチェさん(38)は毎週、朴大統領の退陣を求める集会に参加してきました。「次の政権には、2期続いた保守政権で積み重なった非常識なものを正してほしい。『慰安婦』問題、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備などを、被害者や地元の声を聞かずにどんどん進めてきた。これはおかしい」
「広場に出てくる政治家に政権を担ってほしい」と語るのは会社員のキム・ヘヨンさん(33)。「いままで韓国では、一般の人の声を聞くという政治はなかったように思う。実現できるかは分からなくても聞くことならできる。そうした誠実な政治を求めます」