2017年3月8日(水)
「軍事研究禁止」を継承
学術会議検討委が新声明案
民生分野の資金充実求める
防衛省が大学などに研究資金を提供する制度を創設・拡大したことをきっかけに、軍事研究への対応を議論してきた日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」は7日、議論をまとめる会議を東京都内で開き、学術会議が過去に出した「軍事目的のための科学研究は行わない」とする声明を継承する新たな声明案を大筋確認しました。
声明案は、学術会議が1950年と67年に出した声明には、科学者コミュニティーの戦争協力への反省と再び同様の事態が生じることへの懸念があったと指摘。「軍事的安全保障研究」は学問の自由や学術の健全な発展と緊張関係にあるとして、過去の「2つの声明を継承する」と明記しました。
2015年度に防衛省が創設した安全保障技術研究推進制度は、装備(兵器)開発につなげるという「明確な目的」をもつもので、政府による「介入が著しく、問題が多い」と指摘。研究の入り口で研究資金の出所などの慎重な判断が求められるとし、大学などの研究機関に審査制度を設け、学会などにもガイドラインの整備を求めています。
研究の適切性をめぐっては、今後も率先して検討を進めていくとしています。学術の健全な発展には、民生分野の研究資金の充実が必要だと求めました。
同検討委は昨年6月以来、この問題について議論してきました。24日に開かれる幹事会に対し、検討委の声明案を尊重し、日本学術会議の案として4月の総会に提案するよう求めることを確認しました。
軍事的安全保障研究に関する声明(案)
日本学術会議検討委(要旨)
日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」が7日発表した「軍事的安全保障研究に関する声明(案)」(要旨)は次のとおりです。
日本学術会議が、1950年「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」旨の声明、67年「軍事目的のための科学研究を行なわない声明」を発した背景には、戦争協力への反省と再び同様の事態が生じることへの懸念があった。われわれは大学等の研究機関における軍事的安全保障研究が学問の自由、学術の健全な発展と緊張関係にあることを確認し、上記二つの声明を継承する。
学術研究が政府に制約、動員された歴史的経験を踏まえ、研究の自主性・自律性・公開性が担保されねばならない。軍事的安全保障研究では、研究の方向性や秘密性の保持をめぐり政府の介入が強まる懸念がある。
防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」は、将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、(防衛省)職員が研究の進捗(しんちょく)管理を行うなど政府の介入が著しく、問題が多い。学術の健全な発展から必要なのは民生分野の研究資金の充実である。
研究成果は科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的目的にも使用されうるため、研究の入り口で資金の出所等に関する慎重な判断が求められる。大学等の研究機関は、軍事的安全保障研究とみなされる可能性のある研究について、技術的・倫理的審査制度を設けるべきだ。学協会等にもガイドラインの設定が求められる。
研究の適切性をめぐり科学者コミュニティーで一定の共通認識形成の必要があり、科学界全体が考え続ける必要がある。日本学術会議は率先して検討を進めていく。