2017年3月3日(金)
トランプ大統領議会演説
米欧マスコミ厳しい目
トランプ米大統領が2月28日に連邦議会の上下両院合同会議で行った演説について、米国、欧州のマスコミが相次いで批判的に論評しています。外交、経済政策の不明確さや、移民敵視政策などに厳しい目を向けています。
米紙 偏見助長は「団結に役立たず」
【ワシントン=遠藤誠二】トランプ氏の演説について、主要米紙ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ両紙は1日付社説で、大規模なインフラ投資や軍事費大幅増のための財源の在り方や、移民への偏見を助長する施策などについて厳しく批判しました。
ワシントン・ポスト紙社説は、トランプ氏が打ち出した「国家再建に向けたプログラムに1兆ドル(約114兆円)」「米国の歴史上、過去最大規模の国防費の増加」「中間層への大型減税」などの「優先課題」には財源の裏付けが必要だと指摘。「空洞化された国務省や環境保護局(EPA)、他の不可欠な政府機関は(優先課題には)含まれていない」と述べ、外交、環境分野で大幅な予算カットを狙うトランプ政権を批判しました。
外交分野では、ロシア、中国に言及せず、イラク、アフガニスタンでの戦争への戦略でも提案がなかったと指摘しました。
最後に、政権発足当初から批判が集中した移民・難民政策について触れ、「60分間の演説の中で最も醜かったのは、移民犯罪被害者対策事務所の創設を発表した瞬間だった。不法移民によって殺された被害者の遺族を紹介した。粗野な偏見と恐怖に訴えるもので、彼が模索する国家の団結を促進するのに何の役にも立たない」と酷評しました。
ニューヨーク・タイムズ紙の社説は、「就任後最初の1カ月について、彼は『公約は守られた』と表現するのを好むが、本当だろうか?」と指摘。「選挙中、医療保険制度改革について直ちに対案を出すといったが、計画を提示さえしていない」として、トランプ氏の公約実現≠フ主張を疑問視しました。
また「1兆ドルのインフラ計画で経済成長を加速させると約束した。聞こえはいいが、その計画は? われわれはどのように費用を払うのか? 彼は何も言わない。中間層への大型減税も約束したが、詳細がない」と具体性の乏しさを強調しました。
仏紙「政策不透明」 英紙「誇張された主張」
【パリ=島崎桂】欧州各国メディアは1日、トランプ演説についての論評記事を掲載するなど大きく報じ、同政権への関心の高さを示しました。
仏紙ルモンドは、トランプ氏がメキシコやイスラム教圏の国々、メディアなど、かねてから敵視してきた対象への批判を抑えたことに触れ、「初めて大統領らしさを示した」と評価。トランプ氏がようやく国を統治する難しさに気付いたとして、「遅れたとしても全く気付かないよりはマシだ」と論じました。
併せて、貿易面では環太平洋連携協定(TPP)と環大西洋貿易投資連携協定(TTIP、米欧版TPP)からの撤退以外「何も語らず」、外交面では「北大西洋条約機構(NATO)への支持とテロ対策以外に「見通しを示していない」として、政策の不透明さを指摘しました。
英紙ガーディアン(電子版)は、演説内の発言を詳細に取り上げ、発言の真偽を逐次紹介。「米国では9400万人が失業中」との発言に対しては、退職者や学生も含んでおり、「極めて誇張された主張だ」と報じました。
また、「米国の企業は世界一高い税金を課せられている」との発言については、経済協力開発機構(OECD)の統計を基に「米国はトップ30にすら入っていない」と指摘。
「移民法を強化することで賃金を引き上げ、失業者を救う」との発言については、米国の農業・建築業が移民労働者に深く依存している現状を示し、「短期的にはこれらの産業に混乱を引き起こす」との見通しを示しました。