2017年2月26日(日)
租税回避地利用 政治家は禁止
エクアドル
国民投票で過半数確実
税逃れ対策 NGO歓迎
南米エクアドルで政治家や高級官僚によるタックスヘイブン(租税回避地)活用を禁止するコレア政権提案の施策について賛否を問う国民投票(19日実施)が行われ、賛成が過半数に達することが確実となりました。昨年4月の「パナマ文書」の暴露をきっかけに、タックスヘイブンを活用する政治家や企業幹部への批判が高まっていますが、利用禁止を明確にする施策は世界でも初めて。税逃れや資本逃避を批判してきた非政府組織(NGO)からは歓迎の声が上がっています。(菅原啓)
現地からの報道によると、同国の政治家らがタックスヘイブンに秘匿している資産総額は推計約300億ドル。国内総生産(GDP)の3分の1近くに達し、国民の間に批判の声が高まっていました。
国民投票は、政治家や公務員がタックスヘイブンに資産や資本を所有することを禁止することに賛同するかとの質問に答えるもの。選管当局が22日に発表した集計結果(開票率94%)によると、賛成が55%、反対が45%となっています。
ロング外相は同日、この結果を受け、「タックスヘイブンをなくす政府の活動への支持を確認するものだ」と指摘。国内の規制に加えて、グローバルな解決策が必要であり、国連内にこの問題に対処する機関を設置する働きかけを強めていくと決意を語りました。
国際NGOオックスファムのロサ・カニェテ氏は、国民投票のとりくみを「市民が声を上げ、国民に奉仕すべき人々が税制上の責任を回避してはならないと訴えることを可能にした世界でも初めてのプロセスだ」と称賛。
中南米カリブ海財政的公正ネットワークのルイス・モレノ責任者は、「エクアドルはタックスヘイブンとのたたかいが空想的ではないことを示した」と指摘しました。
コレア大統領は22日、国民投票の結果は与党が「大勝」したことを示すものだと力説し、決選投票となった大統領選挙(4月2日投票)でも左派与党候補のレニン・モレノ氏の勝利を勝ち取ろうと訴えました。
タックスヘイブン 「租税回避地」と訳されます。富裕層や多国籍企業などが巨額の資産を隠し、税逃れのために利用する国・地域のことで、カリブ海や英領のケイマン諸島、バージン諸島などが有名。こうした税逃れの実態を暴露した「パナマ文書」が昨年明らかになり、12人の元・現職首脳を含む50カ国余りの公職者が関わっていたことが分かっています。