2017年1月31日(火)
韓国 「基地村」女性への賠償を命令
国家暴力の被害を証明
ソウル地裁 政府責任認める
1960〜80年代に、韓国の京畿道坡州市や平澤市などの米軍基地周辺に設置した「基地村」で、米軍人相手の売買春行為を助長したとして、女性ら120人が韓国政府を相手取って損害賠償を求めていた裁判で、ソウル地方裁判所はこのほど、政府の責任を一部認めました。韓国各メディアが伝えました。
原告側は26日に声明を発表し、「大きな成果」とする一方、問題解決のためには不十分な判決だとして、控訴すると表明しました。
2014年6月に提訴された裁判で、原告らは「国が直接、基地村を造成し、整備・発展を主導した。国は原告らを『国の発展に寄与し、外貨を稼ぐ愛国者だ』と褒めたたえ、さまざまな方法で女性に売春を勧め、助長した。こうした行為は国内法、国際法違反だ」と主張しました。
さらに政府が当時、性感染症の管理を名目に、原告らに性病検診と治療を受けるよう強要し監禁するなど、原告らの人権を侵害したとも指摘。原告らが受けた精神的苦痛や人権侵害に対し、1人あたり1000万ウォン(約90万円)の慰謝料を払うよう求めていました。
国側は、まん延していた性病を管理していただけで、売春はあくまでも個人の選択で国に責任はないと主張しました。
今回の地裁判決は「国家権力の国民に対する不法収容などはあってはならない違法行為だ」と監禁などの行為を断罪。1人500万ウォンの賠償を命じました。ただし認められたのは、隔離を伴う伝染病を明示した規則が制定された1977年8月以前に監禁された57人でした。
原告らは判決について、声明で「『米軍慰安婦』が国家暴力の被害者であることを証明した判決で、真相究明と名誉回復の礎になった」と評価。一方で、国が売春を助長、勧誘した事実を認めていないことや、米兵による女性の殺人や暴行、監禁などの犯罪行為があったと認定しなかったことなどに不服を表明。控訴にいたった経緯を述べています。
原告らは多くが60〜70代で、提訴した122人のうち、2人がその後亡くなっています。(栗原千鶴)