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2016年12月29日(木)

主張

首相ハワイ訪問

反省ない未来志向£ハ用せぬ

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 ハワイを訪問していた安倍晋三首相がオバマ米大統領と会談した後、1941年に日本が攻撃を開始し日米戦争の戦端を開いた真珠湾を訪問しました。首相はそこでの演説で、「不戦の誓い」や日米の「和解の力」を強調しましたが、アジアをはじめ世界の諸国民と日本国民に大きな被害をもたらした、侵略戦争への責任と反省は口にしませんでした。首相は日米首脳会談で「日米同盟をさらなる高みに押し上げたい」と、沖縄での米軍新基地建設などにふれて「同盟深化」を約束しました。軍事同盟の強化で平和が実現しないのは、歴史の事実が示しています。

「真珠湾」はなぜ起きた

 今回の安倍首相の真珠湾訪問は、過去の首相訪問とは違い、日本軍の攻撃で沈没した戦艦アリゾナの記念館にまでオバマ大統領とそろって足を運び、その直後に2人で演説するという演出に満ちたものです。

 安倍首相は、アジア太平洋戦争での敗戦から70年の昨年4月、アメリカ議会の上下両院合同会議で演説し、「先の大戦に対する痛切な反省」を口にしましたが、演説後、「間違った戦争だったか」との質問には答えませんでした。昨年夏には戦後70年にあたっての談話を発表し、歴代首相の談話などを引用する形で「痛切な反省と心からのおわび」に言及しましたが、同時に「先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と戦争責任問題に終止符を打つ姿勢もあらわにしました。

 今回の首相の演説も、日本は戦後「平和国家」になった、「不戦の誓い」を不動の方針にしていくなどと繰り返しただけで、間違った戦争だったとは認めず、侵略戦争への反省は口にしないものです。戦争への反省よりも“未来志向”で、日米同盟の誇示が目的だったのは明らかです。

 真珠湾は75年前の12月8日、日本が奇襲し日米戦争の戦端を開いた場所で、アメリカとの交渉打ち切りの通告遅れなどが批判されています。しかし日米戦争は31年の中国東北部(満州)への日本軍の侵略に始まり、中国全土、アジア太平洋地域へと次第に拡大した一続きの戦争の延長であり、首相が真珠湾を訪れ、「慰霊」したからといって、それで15年にわたるアジア太平洋戦争への日本の責任が帳消しになるものではありません。

 それどころか、75年前日本がアメリカとの交渉を打ち切り、奇襲で開戦に踏み切ったのも、日本が国際的に包囲され、中国からの撤兵要求などに抗しきれなくなったためです。中国などへの侵略戦争と日米戦争を切り離し、侵略戦争の反省は口にしないというのは、全く道理がありません。

軍事同盟で平和は来ない

 安倍首相は演説で、「日米は歴史にまれな、深く強く結ばれた同盟国になった」と述べ、首脳会談では環太平洋連携協定(TPP)の発効を次期米政権に働きかけることや、オーストラリアやインドを交えた「同盟ネットワーク」の重要性、沖縄での米軍新基地の建設促進などを約束しました。軍事同盟を強化し、力で対抗していく限り、平和は実現しません。

 侵略戦争の責任を認め反省することと、軍事同盟に頼らない平和な国際秩序に責任を果たすことは一体です。その自覚すらない安倍政権の責任はいよいよ重大です。


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