2016年12月20日(火)
ロヒンギャ問題でASEAN外相会議
加盟国間対立とIS浸透を懸念
ミャンマー
【マニラ=松本眞志】東南アジア諸国連合(ASEAN)は19日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで、同国西部ラカイン州に住むイスラム系少数民族ロヒンギャへの人権侵害問題を協議する緊急外相会議を開催しました。ロヒンギャ問題が加盟国間の対立を生んでいることや、過激組織ISが浸透する恐れが背景にあります。
ASEANは加盟国間の内政不干渉が原則。しかし、2012年から激化した仏教徒住民との対立で、多くのロヒンギャが加盟国のタイ、マレーシア、インドネシアや域外国のバングラデシュに脱出しています。
マレーシアのアニファ外相は会議の積極的意義を評価する一方で、ロヒンギャの人権状況改善の進展が遅れていると批判。国軍と治安部隊による逮捕や殺人、性的暴行の情報が相次いでいるとし、「問題は地域的な懸念となり、域内諸国が協力して解決する必要がある」と強調しました。アニファ氏はASEAN各国による人道支援や残虐行為の調査などを提案しました。
今年10月にはロヒンギャの武装集団が治安部隊を襲撃。国際紛争解決を目指す非政府組織(NGO)「国際危機グループ」はロヒンギャへの聞き取り調査の結果として、襲撃犯がサウジアラビア、アフガニスタン、パキスタンのイスラム過激派から訓練を受けていたとの報告書を発表しました。
マレーシアのズルキフェリ国軍司令官は5日、ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍総司令官との会談で、「(ロヒンギャ問題を)うまく対処しなければ、ISが東南アジアで影響と力を拡大する状況が生じかねない」と強い懸念を伝えました。
国連によると、国連機関やNGOが現地入りできない中、人道支援が必要なロヒンギャ15万人のうち13万人に支援が届かない状態。推定約2万7千人が隣のバングラデシュに逃れました。
ミャンマーでは今年、国民民主連盟(NLD)主導の文民政権が発足しましたが、国軍は軍政下で制定された憲法によって特権を保持しており、政府による軍への文民統制が利いていません。
アウン・サン・スー・チー国家顧問はミン・スエ副大統領を責任者に調査委員会を発足させ、来年1月末に報告をまとめる予定。しかし、元軍人で軍部と関係が深いミン・スエ氏に公正な報告が期待できないなどの声もあがっています。