2016年12月14日(水)
空自小松基地 隊員に通話履歴提出要求
1800人全員 不祥事の報道を受け
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石川県小松市の航空自衛隊小松基地第6航空団司令部が、訓練中の不祥事を地元紙に報じられたことを受け、「部隊の秘密・情報保全」を理由に、同基地の全隊員(約1800人)に対し、私用の携帯電話の通話履歴の提出を求めていることが同基地への本紙の取材で明らかになりました。隊員から「プライバシー侵害」「許されない人権無視」「撤回すべきだ」などの声が上がっています。
同司令部は11日、「全隊員に通話履歴の提出を求めている」(渉外担当幹部)と事実を認めました。一方で通話履歴の提出を求める秘密保全上の理由は何か、との質問には「答えられない」としました。
しかし、再度の取材に同司令部の安藤浩監理部長(2等空佐)は12日、「北陸中日新聞」が9日に報じた「64式小銃の(公表されていなかった)部品紛失問題がきっかけだ」と認め、提出を求める通話履歴も「紛失日(7日)前後の数日分とした」としています。
内部告発者探しではないのか、との指摘に同部長は「部内のことをみだりに外部に漏らすことで本来の任務に影響を与える可能性もあり、外部との連絡内容を把握することで防止するためだ」などと述べ、否定しませんでした。
通話履歴の提出指示について「基地司令の指示だが、任意であり拒むことができ、問題はない」(安藤監理部長)としています。
しかし同基地では「“拒めば犯人扱いするぞ”と言われた。事実上の強制だ」との声が上がっています。
解説
「戦時体制」づくりと一体 人権侵害で違法
航空自衛隊小松基地での全隊員を対象にした私用携帯電話の通話履歴の提出指示は、隊員からも「プライバシーの侵害」「人権問題だ」と懸念と反発の声が上がっています。
通話履歴は憲法が保障する「通信の秘密・自由」に関わる、守られるべき人権です。
「秘密・情報保全」「部隊保全」という抽象的な理由で捜査権のない司令部が全隊員から私用の携帯電話の通話履歴の提出を求めることは明らかに「職権乱用」であり違法性は免れません。
通話履歴提出指示は、司令部による内部告発への単純な「報復」ではありません。
提出指示の理由として「本来任務への影響の防止」をあげていますが、PKOなどの海外任務が自衛隊の「本来任務」となっているからです。
自衛隊は南スーダンPKO派遣でついに憲法違反の武力行使である「駆け付け警護」任務を陸上自衛隊に与えるという「戦争する自衛隊」へ踏み出しています。
航空自衛隊も例外ではなく、昨年、戦争法強行直後に「戦時」を前提にした情報保全を理由に、小松基地を含む戦闘機部隊をかかえる航空総隊は全基地で部隊名看板の撤去を実施しています。
秘密保護法の制定時にも、自衛隊内で携帯電話の通話履歴の提出を強要する誓約書を隊員に求めていることが本紙報道で明らかになっています。
自衛隊で始まっているこうした「戦時体制」づくりと、「情報保全」という“軍の論理”で、「通信の秘密」という人権を公然とはく奪する動きは一体のものであり、軽視できません。
(山本眞直)