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2016年11月20日(日)

電通過労自殺 もう二度と…

長時間労働の法的規制急げ

4野党が法案再提出 罰則規定強化

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 電通で起こった過労自殺のような悲劇を繰り返さないため、日本共産党、民進党、自由党、社民党の野党4党は、長時間労働規制法案の罰則規定を強化して再提出しました。電通は、東京労働局などから大規模な強制捜査を受けており、徹底究明が必要です。同時に、日本社会にまん延する長時間労働を是正する徹底した対策が求められています。(田代正則)


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(写真)長時間労働規制法案を向大野新治衆院事務総長(中央)に提出する4野党議員。(左から)堀内照文、初鹿明博、高橋千鶴子、井坂信彦、1人おいて吉川元、玉城デニー、柚木道義、山井和則の各氏=15日、国会内

 野党4党の長時間労働規制法案は、▽青天井となっている残業時間に法的上限規制を設ける▽次の勤務までに一定の休息時間を設ける「インターバル規制」を導入する▽事前に決めた時間分しか賃金を払わない裁量労働制の要件を厳格化する▽労働時間管理簿を義務付ける―ことなどを盛り込んでいます。

 電通事件と照らし合わせると、法案の重要性が浮かび上がります。

残業時間の上限規制

 昨年末に過労自殺した電通新入社員の高橋まつりさん=当時(24)=は、うつ病になる直前、月130時間以上の残業をさせられていました。電通で残業時間を取り決めた三六(さぶろく)協定は、残業を月70時間までとしていたので、それを超える残業が違法となって強制捜査の対象となりました。

 この三六協定は、「特別条項」を結べば、青天井で長時間残業が可能になってしまいます。過労死ラインを超える残業でも「合法」になり、労働基準監督署も手出しできなくなる抜け穴があります。

 厚労省が2001年11月にまとめた「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」は、その日の疲労がその日の睡眠で回復できる状態を維持するには、残業時間は「月45時間」までと結論づけています。1998年12月の労働大臣告示は、残業時間の限度は月45時間までとしましたが、法的強制力がありません。

インターバル規制導入

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(写真)午前5時に点灯をはじめる電通本社ビル=18日午前5時45分、東京都港区

 電通は、長時間労働の是正措置として、午後10時に本社ビルのいっせい消灯をはじめました。しかし、翌朝午前5時には点灯が再開され、消灯時間は7時間だけです。

 電通は、早朝は外部業者による清掃作業だとしていますが、1日あたりの残業時間(最長6・5時間)は、午後10時まで残業しても消化できないため、早出残業があり得ます。

 1日の労働時間の長さだけでなく、勤務の間の休息時間も重要です。通勤にかかる時間を考慮し、食事、睡眠などの時間を十分に確保することが求められます。

 しかし、日本には、一部の例外を除き、勤務間に一定の休息時間を保障するインターバル規制がありません。2日分の労働時間を連続させることも可能になっています。

 国際労働機関(ILO)は休息時間を連続11時間以上確保する方向を打ち出し(医療労働者は12時間)、欧州連合(EU)は労働時間指令で各国が法定化するよう求めています。

サービス残業根絶

 電通では、労働時間の記録が労働者による「自己申告」となっており、高橋さんは残業時間を三六協定の月70時間を下回るよう申告させられていました。

 労働者に残業時間を過少申告させて、賃金を支払わない「サービス残業」は、実際の労働時間が分からなくなるため、長時間労働の温床でもあります。

 日本共産党は、サービス残業根絶を求める国会質問を200回以上繰り返し、01年に厚労省がサービス残業防止のため「4・6通達」を出しました。通達は「使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである」と指摘しました。

 これに対し電通は、いくら長時間働いても一定の賃金さえ払えばすむ制度の導入・拡大を求めてきました。電通人事局の部長は、『労務事情』02年6月1日号で、企画業務型裁量労働制が「当社の営業にただちに適用することが難しい」と指摘して、「法制度の改正が求められる」と訴えています。

 安倍政権が電通など大企業の要望を取り入れて法案提出している裁量労働制の拡大や「残業代ゼロ」制度は、企業の労働時間管理責任をあいまいにします。

 これに対し、野党4党の長時間労働規制法案は、裁量労働制の要件を厳格にして、あらためて使用者の労働時間管理責任を労働基準法に明記することを盛り込んでいます。


日本共産党

国会で追及 政治動かす

 日本共産党は、電通の過労自殺事件を国会で追及し、長時間労働の是正に取り組んできました。(肩書はいずれも当時のもの)

 1991年に電通で起こった大嶋一郎さん=当時(24)=過労自殺事件について、最高裁判決が出る前の98年、大森猛衆院議員が「職場でこんなことは絶対二度と起こしてはならない」と強調。この年の12月、残業時間の限度を月45時間とする労働大臣告示が出ました。

 電通を断罪した00年4月の最高裁判決を受けて、同年4月に不破哲三委員長、志位和夫書記局長が続けて追及。サービス残業根絶を求めた志位氏に対し、森喜朗首相は「サービス残業はすべて悪という考え方を私はとるということは(よくない)。やはり、企業の事情を十分しんしゃくしなければならない」と悪質企業を擁護しました。

 共産党は、労働者の命より大企業の利益を優先する自民党政治の姿勢を批判し続け、01年4月にサービス残業根絶の「4・6通達」を出させました。

 2013年の参院選で躍進した共産党は、「ブラック企業根絶法案」を提出しました。

 吉良よし子参院議員は15年2月、繰り返し是正勧告を受ける悪質企業の社名を公表するよう要求しました。安倍晋三首相は3月、違法な長時間労働を繰り返している場合には公表すると表明。4月に過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)が東京労働局と大阪労働局に設置され、今回の電通問題でも強制捜査に動いています。

 高橋まつりさんの過労自殺が起こり、高橋千鶴子衆院議員は10月12日、残業時間の法的上限規制の導入を迫りました。規制を明言しない安倍首相に対して、「なぜ規制を明言できないのか。『働き方改革』の中身が透けて見える」と批判しました。

 倉林明子参院議員は11月8日、厚労省が電通を労働時間短縮などに取り組み、労基法違反がない企業として「くるみん認定」してきたことを批判。「少なくとも、過労死ラインを超える残業時間協定を結んでいる企業に対する認定は取り消すべきだ」と強調しました。

「8時間働けばふつうに暮らせる社会」の実現を

第27回党大会決議案

 日本共産党は今月16日に発表した第27回党大会決議案で「働き方の改革」として、「8時間働けばふつうに暮らせる社会」の実現を提起しました。

 「(安倍政権が)『働く人の立場』と言いながら、実際には財界の立場に立った雇用破壊をすすめる策動を許さず、人間らしく働けるルールを確立し、格差と貧困の根本的是正に道を開く」と強調し、長時間労働の規制として、「残業時間の法的規制、インターバル規制によって、過労死を生み出す長時間過密労働を解消する。『残業代ゼロ法案』を撤回させる。『サービス残業』を根絶し、『ブラック企業』を規制する」と呼びかけています。


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