2016年11月18日(金)
主張
「働き方改革」
賃上げに内部保留活用不可欠
安倍晋三首相は16日の「働き方改革実現会議」で、2017年の賃金交渉に向け、「少なくとも今年並みの賃上げ」「ベースアップ(ベア)の4年連続の実施」を財界に要請しました。首相は賃上げを要請する理由として「アベノミクス」による「経済好循環の継続」をあげますが、安倍政権の経済政策によって大企業は記録的な大もうけを続ける一方、賃金などの改善は立ち遅れており、収入の伸び悩みによる消費の低迷が深刻化しています。4年連続の賃上げといってもこれまでの賃上げは不十分で、大企業のもうけや内部留保を活用した大幅賃上げが不可欠です。
収入伸び悩みで消費停滞
安倍首相はこれまで「官民対話」などの場で春闘での賃上げを要請してきましたが、今回は「働き方改革」に関連させて賃上げを持ち出しました。首相は経済好循環の継続を理由にあげますが、「アベノミクス」で景気はよくなるどころか、格差と貧困が拡大し、大もうけを続ける大企業に比べ賃金などの改善が遅れる労働者や中小企業などの生活と経営は改善していません。収入の伸び悩みと消費税増税の影響で、日本経済の6割を占める個人消費は停滞を続けているのが現実です。14日発表されたことし7〜9月期の国内総生産(GDP)速報でも、成長はもっぱら輸出頼みで、個人消費は前期比でわずか0・1%の伸びです。
安倍首相は財界に要請して賃上げを3年連続実現したといいますが、賃上げが実現した大企業もせいぜい2%前後の賃上げで、これまでの落ち込みさえ穴埋めできません。中小企業などでは賃上げどころではないというところも多く、厚生労働省の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)では、実質賃金指数(2010年=100)は安倍政権発足時の12年が99・2、15年が94・6と低下しています。(季節変動で直近の9月は80・3)
「アベノミクス」による円安と株高などで大企業は記録的にもうけを増やし、内部留保を積み増してきました。ことし3月期の決算でも大企業(上場企業)の純利益は2年ぶりの増益となったといわれており、利益剰余金や準備金など、資本金10億円以上の大企業がため込んだ内部留保は15年度に金融・保険を除いて313兆円、金融・保険を含めると386兆円に上ると試算されています。文字通り史上最高水準です。
大企業の内部留保のごく一部を活用するだけでも、労働者の賃上げや下請け単価の改善は可能です。労働運動総合研究所(労働総研)はことしの春闘で、内部留保をこれ以上増やさない経営に転換するだけでも、月5・9万円の賃上げが可能という提言を発表しました。要はやる気の問題です。
「環境整備」は必要ない
安倍政権の賃上げ要求に対し、財界・大企業が「(内部留保は)企業のため込みではない」(榊原定征経団連会長)などと活用に消極的な姿勢を示す一方、法人税減税など「経済環境の整備」を条件に持ち出そうとしているのは重大です。これまでも安倍政権は大企業減税などを繰り返してきました。いまさら「環境」を整えなくても、賃上げの条件は十分あります。
大もうけとため込み優先の大企業の経営を改めさせ、大幅賃上げを実現するうえで、国民と労働者のたたかいがますます重要です。