2016年10月25日(火)
主張
日米統合実動演習
許されぬ戦争法初の共同訓練
安倍晋三首相は自衛隊観閲式(23日)の訓示で戦争法(安保法制)によって「日米同盟の絆はさらに強固となった」と述べるとともに、「(自衛隊の)諸君たちには新しい任務が与えられることになる」とし、「精強なる自衛隊をつくり上げてほしい」と指示しました。戦争法に基づく世界規模での米軍への戦争支援態勢を強化するよう訴えたものです。その具体化の一環として、今月末からは自衛隊と米軍による日米共同統合実動演習が始まります。この中で、日米の共同演習として初めて戦争法の内容を反映した訓練を実施するとしていることは極めて重大です。
地球規模の米軍支援へ
日米共同統合実動演習は、陸海空3自衛隊と陸海空軍・海兵隊の米4軍が実際に部隊を動かし、さまざまな訓練を行います。30日〜11月11日まで、日本周辺海空域と各地の自衛隊基地や在日米軍基地をはじめ、初めて米領グアムやその周辺海空域でも実施します。自衛隊からは約2万5000人、米軍からは約1万1000人が参加する大規模な軍事演習です。
戦争法の内容を反映した訓練は、具体的には、「重要影響事態法」に基づく「捜索救助活動」です。11月7日と9日に沖縄周辺海空域で実施し、米国と他国が交戦状態に入り、戦闘で遭難した米軍機の搭乗員や、発見した多数の負傷者を自衛隊と米軍が共同で救助するという想定だとされます。
戦争法の一つである「重要影響事態法」は、日本が直接、武力攻撃を受けていないのに、時の政権が「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)だと判断すれば、自衛隊が米軍を中心とした同盟軍に対し、補給や輸送などの「後方支援活動」(兵站)や「捜索救助活動」といった軍事支援を行うことを定めています。
同法は、それまでの「周辺事態法」を改悪し、事態発生の地域も、自衛隊の活動地域も、事実上、「日本周辺」に限定されていた地理的制約を撤廃し、世界のどこで発生した事態であっても「重要影響事態」だと認定すれば、自衛隊が地球規模で米軍などを軍事支援できるようにしました。
加えて「周辺事態法」では、自衛隊の軍事支援は、戦闘が起こっておらず、その活動の期間を通じて戦闘が起こらない地域に限定されていましたが、「重要影響事態法」では、実際に戦闘が起こっている場所(戦闘現場)以外なら、いつ戦闘が起こるか分からない地域であっても実施が可能になりました。
しかも、今回の訓練で実施される「捜索救助活動」では、実際に戦闘が起こっても中断せずに継続できます。「後方支援活動」では、「周辺事態法」ではできなかった弾薬の提供や戦闘に向かう航空機への給油や整備も可能です。
いずれの活動も自衛隊が攻撃される危険は非常に高く、「殺し、殺される」戦闘になることは避けられません。
訓練の全面化をねらう
今回、戦争法の内容を反映した訓練は、「捜索救助活動」に限っています。しかし、稲田朋美防衛相は今後、集団的自衛権の行使をはじめ戦争法に必要な訓練を全面的に実施していく考えを表明しています。南スーダンへの派兵をはじめ戦争法の発動を許さず、廃止を求めるたたかいをさらに大きくする必要があります。