2016年10月14日(金)
英「スモッグの都」汚名返上へ
ロンドン市 大気汚染対策を提案
排出基準超える車に課徴金
【パリ=島崎桂】深刻な大気汚染に苦しむロンドン市が、汚染対策の強化を進めています。5月に就任したカーン市長は、自動車などの排ガスを厳しく規制する「超低排出エリア」設置の前倒し実施など複数の対策を提案。「スモッグの都」とも揶揄(やゆ)される同市の汚名返上に動きだしています。
ロンドンの大気汚染は産業革命以来の“持病”となっており、その汚染レベルは微小粒子状物質「PM2・5」による大気汚染で注目された中国・北京と同等あるいはそれ以上とされています。1952年には、史上最悪規模の大気汚染・公害事件「ロンドン・スモッグ事件」で1万人以上が死亡するなど、大気汚染対策は同市にとって歴史的な課題となっています。
カーン氏が10日に発表した対策案は、2020年に実施予定だった超低排出エリア設置を1年前倒しし、対象地域の拡大も検討しています。また、渋滞緩和と公共交通機関の利用促進のため導入されている渋滞税(一定の時間帯に特定区域に乗り入れる車に課金)に加え、「排出サーチャージ(課徴金)」の導入も盛り込みました。
17年10月に導入予定の排出サーチャージは、市が定める排出基準を超える車両が対象。こうした車両が渋滞税の対象区域に乗り入れる場合、通行料として1日12・5〜100ポンド(約1600〜1万2700円)を追加徴収します。
買い替えを促進
提案ではこのほか、英政府に対し、排出量の多いディーゼル車などからの買い替えを促進する政策の検討を求めました。
英国のロンドン大学キングスカレッジの環境グループが調査したところによると、大気汚染が原因とみられる死者数は、ロンドンだけで年間9400人以上。窒素化合物(NOx)の濃度が安全基準を超える地域には、小中学校など448の教育施設も含まれており、生徒の健康被害を懸念する教員らも早期の対策を求めていました。
「清潔な空気を」
自身もぜんそく患者であるカーン氏は対策案の発表にあたり、「ロンドンの有害な大気は衛生上の緊急事態であり、抜本的な対策を要する」と指摘。「全てのロンドン市民が、より清潔な空気を吸えるよう尽力する」と訴えました。
市当局は今後、一連の対策案に関して市民の意見聴取を進め、順次実施する予定です。