2016年9月29日(木)
印パ「水戦争」の危険
インドが見直し表明
1960年以来守ってきたインダス水協定
インド政府は27日、インドからパキスタンに流れる河川の利用に関するインダス水協定の見直しを検討する会議を設置したことを発表しました。また同協定に基づき年2回開かれている両国代表による委員会の開催を中断することも表明。さらに、インダス川とその二つの支流で新たなダムの建設計画を加速化するとしており、パキスタン側は「インドが水戦争を仕掛けようとしている」(パキスタン英字紙ネーション)などと強く反発しています。
(伊藤寿庸)
インド政府の発表は、ジャム・カシミール州ウリでのインド軍基地に対する襲撃で兵士18人が死亡した事件(18日)をパキスタンからの越境テロと断定し、国連で両国が非難合戦を繰り返す中で出されたものです。
インド、パキスタンの英植民地からの分離独立以来、インダス川の水利用は紛争の原因となってきました。両国は1960年、インダス水協定に調印。世界銀行も第三者として河川の水資源の共同管理に参加。65年、71年の2度にわたる印パ戦争でも協定は守られてきました。
インドは、今回のダム計画を同協定の枠内としていますが、飲料水や農業・工業用水などをインダス水系に依存するパキスタンはインドによる上流での水利用拡大に神経をとがらせてきました。
国内でイスラム教徒など少数派への迫害を繰り返しているヒンズー至上主義者を支持基盤とするモディ首相は、今年8月の独立記念日の演説で、パキスタンの内部問題である南西部のバルチスタン州での分離・独立運動に対する政府の「弾圧」を初めて公式に取り上げるなど対決姿勢を強めています。
モディ政権に近い評論家C・ラジャ・モハン氏はインディアン・エクスプレス紙で、モディ氏の対パキスタン政策が歴代政権の枠を踏み出し、「エスカレーションの限界を試そうとする」点で、「新しいアプローチ」を示していると指摘しました。
同氏は「パキスタンとの対立をエスカレートさせる(モディ氏の)最近のギャンブルは、多くの人が向こう見ずだとみている」と述べる一方で、これが「一定の計算のもとで行われている」と指摘。インドの経済力の急速な増大、パキスタンのテロ取り締まりが消極的だとする欧米諸国のいらだちなどの状況を踏まえた動きだとの見方を示しています。
インダス川 チベット高原に水源を発する全長約3000キロメートルの大河。中国からカシミールのインド支配地域、同パキスタン支配地域を経て、パキスタンを南北に貫きアラビア海に注ぎます。流域では、インド亜大陸最古の文明であるインダス文明が栄えました。