2016年9月7日(水)
軍事研究助成 上限撤廃
防衛省回答 1件数十億規模も可能
防衛省が2017年度概算要求で今年度比18倍にあたる110億円への大幅増額を求めている「安全保障技術研究推進制度」で、大学や民間企業の軍事研究に対して助成される金額の上限が事実上撤廃される方針であることがわかりました。日本共産党の井上哲士参院議員の聞き取りに対し、同省が6日までに明らかにしました。
最先端の科学技術を軍事転用するための国家的な買収行為です。
現行の助成制度では、対象研究は1件あたり3年以内で、▽9000万円が上限▽3000万円が上限―の2種類の応募条件を設定。あわせて10件程度を採択する仕組みです。
17年度は現行の2種類の条件に加え、研究期間を5年間に延長する新条件を設定。110億円のうち100億円を新条件にあて、「数十億円以下の規模の研究を複数件、採択する方針」です。
同省担当者は、新条件では明確な上限額や採択件数を定めず、「1件で数十億円規模の採択もありうる」と説明。井上氏は、新条件での助成額が現行の数倍から数十倍にまで膨らむ可能性にふれ、「全く別の制度になる」と指摘しました。
同省担当者は、試作や実験に多大な経費がかかる研究や、複数の研究者・機関が参加した共同研究を推進する必要性をあげ、一つの制度の枠内で対応すると強調。今後の予算編成過程で応募条件を微調整する可能性にも言及しました。
同制度をめぐっては、科学者らの軍学共同反対運動の広がりを受け、16年度の応募件数は15年度の4割程度に急減しています。助成規模の拡大と柔軟な資金制度にすることで、採択を確実にして研究者を取り込む狙いとみられます。