2016年9月7日(水)
主張
パリ協定 米中批准
早期の発効で実効ある対策へ
異常気象や生態系の破壊など地球環境の温暖化が深刻化する中、昨年末合意した温暖化対策の新しい枠組み「パリ協定」をアメリカと中国が批准することが発表されました。温室効果ガス排出量で世界第1位の中国と2位のアメリカがそろって協定を批准(承認)したのは重要です。排出量で55%以上を占める55カ国以上の承認で発効することになっている「パリ協定」を一日も早くスタートさせ、温暖化対策を軌道に乗せ、実効ある対策に前進させることが求められます。世界5位の排出大国である日本の責任は重大です。
気温の上昇2度未満に
地球の平均気温は近年上昇が激しくなっており、世界各地での異常気象の発生や北極圏の氷が解け出すなど、人々の暮らしや生態系への影響に危機感が高まっています。国連気候変動枠組み条約にもとづき、2020年以降の温暖化対策の枠組みについて協議を重ねてきた締約国会議(COP)は昨年末のパリでの会合(COP21)で、ようやく合意に達しました。200近くの国と地域が参加する「パリ協定」です。
「パリ協定」は、これまでの温暖化対策の枠組み「京都議定書」を承認していなかったアメリカや削減義務を負っていなかった中国などを含め、世界のほとんどの国が参加し、産業革命後の地球の平均気温の上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えるため、温室効果ガスの排出抑制を合意した画期的な協定です。気温の上昇を2度未満に抑えるためには、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする必要があります。「パリ協定」参加国は、それぞれ目標を提出しています。一日も早く協定を発効させ、温暖化対策を軌道に乗せることが不可欠です。
これまでに「パリ協定」を批准した国は、温室効果ガスの排出量では世界の約1%にとどまっているといわれます。排出量がそれぞれ20%近い中国とアメリカが批准すれば一気に40%近くにのぼり、発効の条件となっている55%に大きく近づきます。今年の主要国首脳会議(G7、伊勢志摩サミット)では年内の発効を合意しており、日本など排出大国の責任が厳しく追及されています。
「パリ協定」にあたって各国が提出した削減目標では、温室効果ガスの排出を今世紀後半には実質ゼロにするという目標には全く不十分です。しかし「パリ協定」には5年ごとに目標を見直すことを各国に義務付ける条項があり、協定を早期に発効させ、各国の目標自体も温暖化を防止できる意欲的な目標に見直していくことが必要です。そのためにもまず協定そのものの早期発効が求められます。
日本が世界で孤立する
日本が「パリ協定」にあたって提出した削減目標(約束草案)は、国際的に見て極めて不十分なものでした。削減目標のもとになった安倍晋三政権のエネルギー計画は、原発への依存を続けるとともに、温室効果ガスの排出が大きい石炭火力にも依存するものです。
そのうえ安倍首相は、アメリカや中国が「パリ協定」を批准した後の記者会見でも、「パリ協定」批准に向けた日本の態度を明らかにしていません。安倍政権が直ちに批准に踏み出し、削減目標も見直さない限り、日本が世界で孤立することになるのは免れません。