2016年9月4日(日)
主張
概算要求100兆円超
大型開発と軍拡の予算許せぬ
2017年度の予算編成に向けた各省庁の概算要求が出そろい、年末に向けた財務省の査定が始まります。概算要求の総額は101兆円台の半ばの見込みで3年連続100兆円を突破しており、16年度当初予算の96兆7218億円を約5兆円上回ります。とりわけ、大型開発など公共事業費と軍事費が大きく増えています。安倍晋三政権は概算要求で抑制した社会保障費を査定ではさらに削り込もうとしており、財政事情を理由に、大型開発や大軍拡のツケを国民に押し付ける姿勢があらわです。
国の借金で開発を支援
100兆円を超す概算要求のうち、これまでの国の借金返済や利払いに充てる国債費を除いた政策経費は、約77兆円に上る見込みです。なかでも伸びが大きいのは大型開発など公共事業費を計上した国土交通省の概算要求で、一般会計で16年度予算に比べ1・15倍の6兆6654億円、国が財投債を発行して投資や融資を行う財政投融資で2・21倍の3兆8524億円を計上しています。
その中身も「物流ネットワークの強化」をうたった首都圏の高速道路整備やコンテナ船、大型クルーズ船などが寄港する港湾の整備、整備新幹線やリニア中央新幹線の建設促進など大型開発が中心です。JR東海が建設するリニア中央新幹線の名古屋―大阪間の建設を前倒しするため、16年度補正予算案に続き17年度予算の概算要求でも1兆5000億円もの財政投融資を予定しています。採算の見通しもなく問題山積の大型開発を、国の借金で賄うものです。
防衛省が概算要求した軍事費も、5兆円を突破した今年度よりさらに増やされ、5兆1685億円となっています。自衛隊員の人件・糧食費はほぼ横ばいなのに、安倍政権が進める「海外で戦争する国」づくりのため、垂直離着陸機V22オスプレイや水陸両用車AAV7、16式機動戦闘車など、装備の強化が大量に盛り込まれているのが特徴です。最新鋭戦闘機F35Aの取得継続や新たな空中給油機の導入も予定されています。大学などとの「軍学共同」を加速するため、「安全保障技術研究推進制度」に16年度に比べ18倍もの予算が計上されているのも見過ごせません。
概算要求では、大型開発や軍事費の大盤振る舞いの一方で、社会保障や教育など国民向けの予算は圧迫されています。安倍政権が目玉にしてきた年金の受給資格期間の短縮や給付制奨学金の創設は検討中ということで概算要求にはありません。厚生労働省の概算要求は過去最大の31兆1217億円となっていますが、1兆円程度に上るといわれる高齢化等に伴う負担増額(自然増)を6400億円に圧縮し、財務省はこれからの査定でさらに5000億円程度に切り縮める計画です。社会保障の水準が維持できないのは明らかです。
安倍政権に任せられない
国民から集める税金や国の借金で賄う予算は国の政治そのものです。大企業が潤う大型開発や軍事費には大盤振る舞いしながら社会保障費は圧縮する概算要求は、国民に冷たい安倍政治の証明です。
100兆円もの財政を野放しで拡大する政治はいつまでも続きません。借金で財政が破綻し、国民に大増税が押し付けられるのは必至です。安倍政権に政治が任せられないのはいよいよ明らかです。