2016年8月30日(火)
黒人世帯の資産 白人並みまで228年必要
米の人種間格差深刻 研究機関報告
税制の見直しなど要求
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【ワシントン=島田峰隆】米国の黒人世帯の資産額が白人世帯並みになるには今後228年かかる―。米国の研究機関は、米世帯の資産額でみた人種間格差についての報告書を発表(8日)しました。報告書は、白人が多数を占める富裕層を優遇する税制の見直しなど、政府の政策転換を求めています。
報告書は、米シンクタンク「政策研究所」(IPS)と貧困撲滅を目指す団体「事業開発法人」(CFED)がまとめました。1983年から2013年までの30年間について、株、債券、不動産など世帯の資産額の変化を調べました。
2013年の時点で白人世帯の平均資産額は、黒人やヒスパニック(中南米系)の世帯の約7倍です(グラフ)。30年間に白人世帯の平均資産額は約85%増えました。一方で黒人世帯は約27%、ヒスパニック世帯は約69%の増加でした。
報告書の試算では、黒人世帯の資産増のペースが今後も同じ水準にとどまるならば、13年時点の白人世帯の資産額に黒人世帯が到達できるのは、228年後の2241年です。ヒスパニック世帯の場合は84年後の2097年です。
この30年間に、米国の富裕層上位400人の資産は736%増えました。400人のうち黒人は2人、ヒスパニックは5人しかいません。この400人の今の資産総額は、黒人全体にヒスパニックの3分の1を加えた6千万人以上が持つ資産総額を上回る2兆3400億ドル(約235兆円)です。
米国では2043年までに有色人種が全人口の半分以上を占めると予測されています。報告書は「いま対処しなければ、有色人種の経済的機会に深刻な打撃を与え、国全体の経済の健全さに悪影響を与える」と指摘しました。
また「資産の格差拡大は偶然ではない。過去から現在にいたる政策の当然の結果だ」と強調。不動産購入にあたっての白人優遇制度、最低賃金制度からの黒人労働者排除、富裕層優遇税制などを挙げ、「政策が意図的に、あるいは不注意に、白人と有色人種の格差を広げるよう企図されていた」と批判しています。
報告書は議会と次期大統領に対し、▽現在の政策が格差縮小に役立っているか検証する▽富裕層優遇税制の是正や課税逃れ対策を行い、貧困層の資産形成を支援する▽累進課税の強化と富裕税の導入で富の集中を防ぐ―ことを提案しました。