2016年8月18日(木)
南シナ海 行動規範
枠組み案 来年前半に
ASEANと中国 初合意
【ハノイ=松本眞志】東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は15、16の両日に中国内モンゴル自治区の満州里市で開いた高官会議で、南シナ海での紛争解決のための法的拘束力を持つ「南シナ海行動規範(COC)」について、来年前半に「枠組み草案」を策定することで合意しました。
ホットライン開設など確認
今回の会議は、「行動宣言」履行のために2011年から行われている高官会議の13回目。ASEANと中国が「行動規範」の具体的な策定時期に合意したのは初めてです。
中国外務省発表やシンガポール紙ストレーツ・タイムズ紙などによると、会議では南シナ海紛争の平和的な解決を改めて確認。海上での緊急事態に対処するための外交当局間ホットラインの開設と、艦船が遭遇した際の行動規則を定める「海上衝突回避規範」を南シナ海で適用することを確認した二つの共同文書を採択しました。
二つの文書は、9月のASEAN・中国首脳会議で正式に合意、発表される予定です。
中国とASEANは02年に、紛争の平和的な解決や事態を悪化させる行為の自制、海洋協力などを盛り込んだ「南シナ海行動宣言(DOC)」に合意しました。これを法的拘束力のある「行動規範」に格上げするための協議が13年9月から続いています。
中国の劉振民(りゅうしんみん)外務次官は会議後の記者会見で、これまで中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイの間の紛争解決に「行動宣言」が有効に活用されてこなかったと指摘。「域外からの干渉なしに、当事国による紛争解決を図るために、『行動宣言』の下で協力を強化する必要を改めて確認した」と述べました。
中国は、南シナ海における同国の権益主張について「国連海洋法条約上の根拠がない」と否定した常設仲裁裁判所の判決を無視する姿勢を取っています。ストレーツ・タイムズ紙は、中国が判決後、「行動宣言」を重視する姿勢に転じたと報道。南京大学「南シナ海研究協同創新センター」の朱鋒教授は同紙に、「判決を拒否した後、中国としては『行動宣言』を通じた紛争解決に積極的な姿勢を見せる必要に迫られている」と語りました。