2016年8月6日(土)
退役米兵1日平均20人自殺
10・20代が率高く
戦地体験でPTSDに苦しみ
【ワシントン=島田峰隆】米国の退役軍人省は3日、退役した米兵の自殺に関する報告書を発表し、2014年の時点で、1日平均20人が自殺していることを明らかにしました。元米兵の自殺率は通常の国民より高く、退役米兵の自殺問題が依然として社会に重くのしかかっていることを示しました。
政府が発表
報告書は、米同時多発テロが起きた2001年から14年の動向をまとめました。テロ対策を理由に米国がアフガニスタンやイラクを侵略し、占領した時期です。今回は調査対象を広げて、すべての州について、1979年から2014年にかけて退役した米兵5500万人以上の記録を調べました。
報告書によると、01年から14年の期間に、通常の米国民の自殺者数は23%増えたのに対し、退役米兵の自殺者数は32%増えました。
一方、退役米兵が年々増えることも考慮に入れた、退役米兵10万人当たりの自殺者は14年が39・0で、最も高かった01年に次ぐ比率となっています。
退役軍人省は、緊急電話相談窓口の設置や精神疾患を患う元米兵を治療する医師の増員などを行っています。しかし同省の支援制度を利用した退役米兵の間でも自殺率は8・8%上昇しました。
14年に自殺した退役米兵の約65%は50歳以上でした。自殺率で見ると、世代的には数が少ない18〜29歳の若い退役米兵が最も高くなっています。
報告書は自殺が後を絶たない原因には明確に触れていません。
海外での戦争に従軍した退役米兵の間では、戦地での恐怖体験から心的外傷後ストレス障害(PTSD)や外傷性脳損傷(TBI)に苦しんで自殺に追い込まれる人が多くいます。けがなどで社会復帰ができず貧困に陥るケースも少なくありません。